今日、私たちの中学校で最後の行事が行われる
そう、卒業式
賞状を受け取り、練習通りに元の席へ戻る
・
・
・
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
校門のあちこちで生徒同士が泣き合っていた
(卒業式はもう終わったんだから、すぐに帰ればいいのに..)
ふと、そう思ってしまった
でも、これは誰とも関係を作られないことへの妬みだったのかもしれない
頭の上でパンッと指を鳴らすと、空からゆらゆらと花が舞い降りる
私はあなた達と大して交流も取っていなければ、どんな感情も抱いてはいなかった
けれども、最後くらいは人間らしく、みんなに想いを届けておこうと思ったの
手を頭の上に固定したまま、もう一度指を鳴らす
ハナニラから青いバラに切り替えると、私はその場を去った
きっと、もう会う事は無いから..
会ったとしても、きっとあなたは私を知らないもの
普段は人を避けているから、こうして話しかけられることも少なかった
最後だから、というのもあるかもしれないけれど
会話というものを同じ年代でしたことはなかったから、私は少し緊張してしまった
もう用はないのかな、と、私はすぐに立ち去ろうとした
後ろを向いた途端、服を少し引っ張られ、私はもう一度振り向いた
そう言われ、私は少し恥ずかしくなった
苦手だからこそ、回りくどく..気持ちを伝えていた
だけど、こうして率直に伝わるということは、無かったから
緑谷くんはそれだけを私に言うと、走って行ってしまった
その場に取り残された私は、とても複雑な気持ちだった
私の個性はいつだって
みんなには届かなくて
私の行動はいつだって
みんなには認められなくて
私の想いはいつだって
みんなには伝わらない
自分の想いが、初めて伝わった気がして...
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。