トントン と、机の上で書類の角を揃え、封筒の中へと入れる先生を見つめ、私はお礼を言った
連絡が来れば、あとは編入試験のみ
最後の言葉を言い終える前に、私の声が別の声によってかき消された
声の正体は、私のクラスメイトだった
どうやら、私と先生の話を盗み聞きしていたらしい
私は少し、曖昧な口調でそう言った
濁したのは、まだ確定できていないからだ
だって私..まだ試験受けてないし
そんなこと、心から思っているはずがない
たった1人がいなくなるだけなんだから
私とクラスメイトは、ただのクラスメイトでしかないから
同じ教室で学んでただけ。
箱の中でクラスメイトを演じていただけの仲
だけど....━━━━━━━
聞こえなかったのだろうか、と思い、私はもう一度
「雄英」とはっきり言った
すると、相手は 「ぇ」が「え」になっただけで、口を開けてただ唖然と私を見るだけだった
今のところは、まだないに等しい
ヒーローを目指すとも決めてはいないし
ただ、夢の土台にするだけだから
まぁ、向こうは私をヒーローに仕立て上げるつもりなんでしょうけど
私の考えだと、今日書類を送ると、返事は3日以内だと想定される。
まぁ..あんなにも執拗い方々なので、1日で返ってくるだろう
そうなると..編入試験は1週間以内の休み..つまり、土曜日だと予想される
そこで私が受かったならば、用意なども特にないため...
今のは少し冷たかったかな、と自分で思いつつも、あれが自分の中の精一杯だと妥協した
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さて、長々と編入までの物語を書かれても退屈だと思うので、内容を省くこととしましょう
ということで、本日はこの高校で過ごすのが最後の日です
私の予想では、今日のHRは少し..いや、かなり長引くでしょうね
短い期間だったとは言え、私のクラスメイトの事は少し理解しているつもり
だから..きっと
静かに席を立ち、教壇の近くへ出る
生徒の代表がそう声にすると、生徒がに立ち上がった
立ち上がった生徒たちが一斉に上方向に何かを投げた
私はそっとしゃがむと、落ちた花弁を手にとった
私は教室の端っこに置かれていた花瓶を取り、上からハンカチをかけた
素早くハンカチを花瓶から取ると、そこには一輪の花が咲いていた
まぁ、私の個性だけれど
本来は私がそうしない限り枯れない。
けれど、ずっと形として残っている言葉なんて、ないから
ただ、クラスメイトを演じていただけ
だけど....このクラスは、すごくいいクラスだよ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!