闇は、因縁かのように訪れ、人の身体を蝕む
暗く、細い路地を全力で走り、どんどん奥へと向かう
息は既にあがっていて、足も身体に着いていくので精一杯かのように重くなっていた
自分の後方から聞こえる声に、私は酷く焦った
買い物から帰り、施設に入ろうとした時、後ろから声をかけられた
何か重くのしかかるような気配を感じ、咄嗟に
「危険だ」と思った
その相手が、今私が逃げている相手だった。
その人はずっと余裕な表情,声で追いかけ続けてくる
まるで、完全に計画を練って行われているかのように
その個性に関しても、気になることがあった。
さっきから試しているけれど...
使えない
相手の個性なのか、それとも、何らかの原因で今使えないだけなのか
どちらにせよ、使えないのは少々苦しかった
そして、もう1つ最悪の状況に陥ってしまった。
逃げ続けていたのはいいけれど、行き止まりに差し掛かってしまった
この時に気がついた
追い込まれていた、と
額を冷たい汗が流れた
空気が重く、緊張状態にあった
この人の話し方には特徴がいくつかあった
話し方がとても幼いこと
やたらと接続詞が多いこと
まるで、園児と話しているようだった
だけど、相手は大人で、頭の回転だって速い
私は表情を崩すことなく、話を聞いていた
物事を行うには、何事にも意識が必要。
無意識と良く言うけれど、それは脳がそれを行うと判断しているためだ
その判断基準である意識を阻害された場合、脳はその動作を忘れていると判断することがあると聞いたことがある
相手が行動を起こそうとしているのに気が付き、動きの予想を立てようと試みるが、それは叶わなかった
相手は想像以上に速く動き、パシッと私の手を掴んだ
声をあげようとする私の口を、手で覆われた
口元を触れるのは、手ではなく布だった
その布からはほのかに甘い香りがしており、だんだんと視界がぐらついてきた
次第に体の力が抜け始め、カクンッと膝が崩れ、相手に身体を預けるしか無かった
完全に私がおちたと判断した敵が、口元の布を取った
その時にはまだ少しだけ体力が残っていたため、私は最後の足掻きをした
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。