《エイジside》
覚悟を決めてここに来たっていうのにいざとなって足が竦む。
みんなになんて言われるだろうか。
あなたは俺を見てどんな顔をするだろうか。
「帰って」
なんて言われたらどうしよう。
そんなことばかりが俺の脳内を駆け巡る。
俺っていつからこんなに臆病になったんだろう。
ここに来た以上、もう後戻りはできない。
拳を握りチャイムを鳴らす。
あなたが出てきたことに驚き咄嗟に隠れてしまった。
息を殺してあなたから隠れる。
<ガチャン
扉が締まり俺は深いため息をつく。
つくづく自分は卑怯な人間だと思う。
そして何より驚いたのは
あなたの姿だった。
あんなに気にしていた髪はボサボサで、痩せ細っていた。
あんなに苦しんでいたなんて…
俺はなにも知らずに……
そういえば俺っていつからあかねの事を好きになったのだろう。
小さい頃からずっとあなたといた。
あなたといるとあかねとは違う気持ちになる。
上手くは言えないけど、強いて言うなら''落ち着く''、''安心する''
俺はちゃんとあかねを好きだったのだろうか。
俺ってちゃんとした恋したことあったっけ…?
続く 。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!