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第1話

62
2019/01/03 08:36
 いつものように起きて、
いつものように制服に着替えて、
いつものように学校へいく。
いつもと変わらない日常。
─でも1つ変わらないことがあった。
学校の校門へと続く道の周りには桜の木が沢山立っている。その桜が今日は満開に咲いていた。
少しピンクがかった桜や、白い色をした桜など色々な桜の花びらが僕の横を通って地面へ落ちていく。
暖かい優しい風が吹く。僕は1度その場に立ち止まり、目を瞑る。そして耳を澄ます。
桜が揺れる音、人の足音、風が吹く音。
全てが美しく感じた。
僕は目をあけ、目の前に立っている桜の木をみつめ、目を細めて微笑む。
するとその時、
「桜が好きなのね」
と、突然声がした。その声はとても綺麗で透き通った声だった。
「だ、誰?」
僕はその声に返事をするように言った。
でも返事はなかった。
空耳かと思い、初めて1人で「だ、誰?」と言っていたのが恥ずかしくなった。

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