さとみくんは慌てた様子でこちらに走って来て
そう言ってきた。
もう勘づかれていたのか……。
でも、どうやって逃げれば……。
僕達は莉犬くんとジェルくんに引っ張られ、
神社の一番奥にある建物の前に来た。
すると、莉犬くんが鍵を取り出し、
建物の扉を開けた。
僕達二人は本殿の中に入った。
本殿はとても殺風景な場所だった。
拝殿の方がたくさんの神具があって
余程それらしく見える。
すると、異形の者が現れた。
もしかして、これが苺神様?
苺神は僕達は優しく包み込んでくれる。
ああ、優しいこの温もり。
僕はこんなことをずっと求めていたんだ。
ずっとこのままでいたい。
るぅとくんだけ何か感じ取れたようだ。
だから、苺神をお父さんと呼んでいるのだろう。
僕達はこれでいいんだ。
この温もりに包まれていれば、
他に何も要らない。
本当のお父さんとお母さん、クラスメイト、先生、
みんなみんな捨てた。
僕達はここで生きていくんだ。
すると、後ろからバタバタと足音が聞こえる。
莉犬くんとジェルも苺神に抱き締められる。
僕は優しい温もりと共に意識を手放した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。