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第7話

苺神の温もり
830
2021/07/11 21:54
さとみ
さとみ
お前ら!急いでここから逃げろ!
ころん
ころん
えっ?
さとみくんは慌てた様子でこちらに走って来て
そう言ってきた。
るぅと
るぅと
何かあったんですか?
さとみ
さとみ
お前の父親が来たんだ!
ころん
ころん
えっ、そんな……
もう勘づかれていたのか……。
でも、どうやって逃げれば……。
るぅと
るぅと
僕達はどこに逃げれば
いいんでしょうか?
さとみ
さとみ
うーん……
ジェル
ジェル
本殿に隠れればええやん!
莉犬
莉犬
そうだよ!お父さんが守ってくれる!
さとみ
さとみ
そんなんじゃすぐにバレる
さとみ
さとみ
さっさと遠いところに逃げろ!
莉犬
莉犬
お兄ちゃん達こっち来て!
僕達は莉犬くんとジェルくんに引っ張られ、
神社の一番奥にある建物の前に来た。

すると、莉犬くんが鍵を取り出し、
建物の扉を開けた。
莉犬
莉犬
ここが本殿だよ!
さとみ
さとみ
お前ら、本当にいいのか?
ころん
ころん
えっ?
るぅと
るぅと
えっ?
さとみ
さとみ
体が乗っ取られるかもしれねぇぞ
るぅと
るぅと
……いいです
るぅと
るぅと
僕はもう生きてはいけないから
ころん
ころん
僕も大丈夫。覚悟は決めてる
さとみ
さとみ
そうか……じゃあ、行け
僕達二人は本殿の中に入った。

本殿はとても殺風景な場所だった。
拝殿の方がたくさんの神具があって
余程それらしく見える。
すると、異形の者が現れた。
もしかして、これが苺神様?
るぅと
るぅと
こっ、ころちゃん!
ころん
ころん
大丈夫、怖くない
ころん
ころん
それに僕達は忌み子でしょ?
るぅと
るぅと
うん……
苺神は僕達は優しく包み込んでくれる。

ああ、優しいこの温もり。
僕はこんなことをずっと求めていたんだ。
ずっとこのままでいたい。
るぅと
るぅと
ありがとう……“お父さん”
るぅとくんだけ何か感じ取れたようだ。
だから、苺神をお父さんと呼んでいるのだろう。
ころん
ころん
……ありがとう
僕達はこれでいいんだ。
この温もりに包まれていれば、
他に何も要らない。
本当のお父さんとお母さん、クラスメイト、先生、
みんなみんな捨てた。

僕達はここで生きていくんだ。
謎の声
謎の声
ミンナ、シアワセニナロウ……
るぅと
るぅと
うん!
すると、後ろからバタバタと足音が聞こえる。
莉犬
莉犬
お父さん!
ジェル
ジェル
オトン!
莉犬
莉犬
大好き!
莉犬くんとジェルも苺神に抱き締められる。
僕は優しい温もりと共に意識を手放した。


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