夜の12時、オレの家に春樹と陽司が来た。
春樹がバイトを始めると言っていた。
今日がその日だったらしい。
当たり前だけど愛花がバイトしていることは知らなかった。
理由はただなんとなくだけどわかってしまった。
オレはたまにバイトに行っている。
父親の親友が経営している居酒屋。
陽司がオレの部屋のカーテンを開け呟いた。
時刻はもう2時半なのに愛花の部屋のカーテンからは光が漏れていた。
そう、オレは愛花の連絡先を知らない。
知っているのといえば家の住所と家の電話。
ただそれだけしか知らない。
携帯を持ち始めたときにはもう既にオレは愛花との距離をとっていた。
玄関の扉が開いた音がした。
母さんが帰ってきたのかと思ったけど違ったみたいだった。
すぐにオレの部屋の扉をノックする音が聞こえた。
声を聞いてすぐにわかった。
兄の隼人だった。
昨日、黒髪に染めた。
やっぱり、愛花には彼氏がいるのかと少しショックを受けていた自分がいた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。