「そういえば有咲ちゃん…有咲は何歳なの?」
ぬいぐるみを退けてソファに座る場所をつくった深雪は私に手招きをした。
ぬいぐるみに囲まれて座るのもなんだか嫌だったけど、我慢して座る。
「今12歳…かな?」
「じゃあ同じだね!誕生日は?」
「分かんない…」
「じゃあ、今日が誕生日ね!」
「えっ」
深雪は壁に飾ってあったボロボロになったカレンダーに丸をつけた。
そしてこう書く。
『有咲の誕生日』
「深雪、それって随分前のカレンダーじゃ…?」
「しょうがないじゃん。これしかないんだもん。」
深雪はなんか文句ある?とでも言いたげにこちらを見つめてきた。
その目線に耐えきれず、思わず目をそらしてしまった。
私はそれを誤魔化そうと、必死に話題を作ろうとした。
「深雪のお母さんとお父さんはお仕事なの?」
すると今度は深雪が私から目をそらした。
「………………」
暫くの間、沈黙が訪れた。
最初に口を開いたのは私。
「べ、別に、話さなくてもいいよ。」
「ううん、話したくないわけじゃないの。でも………………………」
………………その日は結局、狭い部屋の中で、2人で身を寄せ合いながら静かに眠った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。