第11話

拾壱
2,454
2020/10/27 09:31
「今日は絶対にあなたと遊ぶんだから!絶対に離さないわ!良いわよね,リンタロウ⁉︎」

「エリスちゃん…」

「エリス嬢…」

「エリスちゃん,一応あなたちゃんにも仕事が…」

「知らない!」

「せめて会議には出て欲し___」

「此の前のピンクの洋服ドレス,着てあげても良いわよ」

「あなたちゃんは,一週間くらい休暇を取っても良いよ」



「厭,流石に其れは駄目でしょ」



「おや,太宰君」

「はぁい,森さん」

「ダザイ!」

「御免って!此の後も二人が遊ぶとは思わなかったんだよぉ…」

「バカァ!」ポカポカ

「痛い痛い!」

「まぁまぁ」

「今日は絶対にあなたと遊ぶんだから!どんな事が有っても邪魔しないでね!」

「「はーい」」

「ダサイ,あなたは何処⁉︎」

「中也の処に行った」

「チューヤー‼︎」




「元気な女の子だなぁ」

「可愛らしいじゃないか」

「…森さん」

「何だい?」

「私,あなたちゃんを抱いたよ」

「!…」

「…なんか,もう色々判らなくなってきちゃった…。本当に私は,あなたちゃんを守れるのかな…」

「…」

「姐さんには内緒にしてね?…私,まだあなたちゃんとちゃんとした話してないんだ」

「…そうか」

「あなたちゃんは…きっと私を離したりしないんだろうね…。私だって離れたくない…けど,何故か変な気分になるのさ…」

「…君は,其れを引き摺りながら,彼女の前から姿を消す」

「…」

「私の中で,何故かそんな妄想がある」

「……同じだよ」

「…」





きっと私は,あなたちゃんを愛する事を許されないまま

好きで好きで仕方無いのに…

気持ちを伝える事が出来ないまま,

死ぬのだろう,ね。










「…あなた,ですか?」

「えぇ。ダザイが此処に居るって云ったものだから」

「あなたならもう行きましたよ」

「そう。有難う」






「あれは,エリス嬢…?」

「本当だ。お一人の様だ」



「黒蜥蜴の人間ね。」

「どうも,エリス嬢」

「あなたを見なかった?」

「厭,見ておりませんが…」

「もう…何処行っちゃったのよ…」



「あなたさんなら…」



「銀?」

「本部を出て行きました,けど…」

「誰かに云ってた⁉︎」

「い,いえ…」

まずい…」














「リンタロウ!大変よ!」



「如何したんだい,エリスちゃん。そんなに取り乱して…」

「あなたが行方不明よ!」

「なんだって?」

「誰にも何も云わずに,本部から出て行ったわ!」

「⁉︎…」


私は一目散に走り出した。


「太宰君⁉︎」

「森さん,今直ぐあなたちゃんの居場所を探して!」

「え…」

「嫌な予感がする…!」

「ちょっ,太宰君⁉︎」

「リンタロウ,早く!」

「え…」

「あなたが今まで何も云わずに出て行った事なんて有った⁉︎」

「…真逆…」




「失礼します!」




「中也君。」

「エリス嬢,矢張り…」

「そんな…」



「あなたの普段着は,部屋の中に置いて有りました。」



「其のうち帰って来ると思いますが…」

「あなただって17よ?門限があるわけじゃ無いわ…」

「もう自由に外に出たい時期だろうし…」

「…そんなこと無いわ。」

「エリスちゃん…?」

「もしそうだったとしても…ダサイが彼処まで取り乱すんだもの」

「「!」」

「あなた…」

「…一応,探してみようか」

「リンタロウ…」

「ほらほら,泣かないで。」

「泣いてなんか無いわ!」

「はいはい。」

「必ず見つけ出すわよ。例えあなたが…嫌だと云っても…無事か如何かは確認するの!」

「判ったよ。中也君,君は直ぐに捜索に入ってくれ。」

「了解です!」



「紅葉君にも声を掛けよう。」





「……もしもし,紅葉君」

〈何じゃ,鴎外殿?〉

「あなたちゃんが急に姿を消してね…。今日は午前中は休みにしていたんだが…何処にも居ないのさ」

〈其れは誠かぇ⁉︎〉

「嗚呼。普段着も部屋に置いてあって,誰にも何も云わずに消えたんだ…。帰って来るかもしれないが…」

〈?…〉

「太宰君が妙に取り乱したんだ」

〈……其の太宰は?〉

「行ってしまったよ。恐らく,あなたちゃんを探しに行った」

「…承知した。私ちも探そう」

「頼んだよ」












「はぁ…はぁ…」






「誰にも何も云わずに出て行ったわ!」






エリス嬢の其の言葉を聞いて,本部から勢い良く飛び出してきた。

あなたちゃんを探しに出て二十分…

もはや何処を探せば良いのか判らない…。

何にも考えずに出てきてしまった

私らしく無い…本当に何も考えずに。




『私は,何処にも行かない』




『私は…此処に居る。』








糞ッ…




「嘘…だったのかい…」





傍に居てくれると…云っていたのに…。



酔っていたからといえ,何も考えずに

彼女に甘えていたのだと

私は判った。

"裏切られる"

そんな言葉も忘れて…自分の事しか,考えなかったのだ…。




「あなたちゃん…せめて…」






もう一度だけで良い…

其れで最後にしたいなら,其れで良い





「もう一度…君に会いたい…!」














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