朝練後、信ちゃんと喧嘩したことを反省しながら歩いていると、女の子が肩にぶつかってきた。
私は首にスタンガンを当てられ、ふっと意識を手放した。
なんでスタンガンなんて物騒なもの持ち歩いとんねん。
そして、次に目が覚めた時、今はもう使われていない方の体育倉庫にいた。
手足はロープのようなもので縛られ、身動きが一切できない。
口にはガムテープを貼られとるし、大声を出して助けを呼ぶこともできん。
おまけに、今日はほんの少し冷え込んどるし最悪の条件が重なったって訳だ。
誰かに気づいてもらいたくてとりあえず声を出したものの、聞こえてきたのはドアの外にいたあの人の声だった。
私はとにかく抵抗したくて、縛られた足を動かしてドアを叩いた。
だけど、しっかり施錠されているドアは開くはずもなく、あの人はもう既に立ち去ったあとだった。
こんなことになるなら、あの時信ちゃんと喧嘩なんかしなければ良かった。
私がいなくなったことに、気がついてくれるかな。
怖い、寒い、泣きたい、助けて。
私は心の中でただひたすら信ちゃんのことを想っていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。