第12話

着信
996
2020/05/19 22:51
その日の夜、

帰宅するとすぐにベッドに転がった私は

メールを確認しようとケータイを開いた。
あなた 「んえっ?!?」

知らないうちに新しい連絡先が登録されている。
あなた 「な、なんで…!!」


プルルルルルルルルルル


あなた 「ひゃあっ!?」

ちょうどその後本人から電話がかかってきた。

何の用だろうか。見当がつかない。

とりあえず出なくては。


あなた 「も、もしもし…??」
轟 「体調はどうだ?平気か??」
あなた 「うん、大丈夫。……って!!
なっ、なんで焦凍くんの連絡先が私のケータイに
登録されてるの!?!」
轟 「前に一緒に帰ったとき、あなたのカバン預かってたから。そのとき。」
あなた 「そっ、そのときって……!!」



何を隠そう、登録されていたのは

轟焦凍ご本人の電話番号だった。

轟 「中身は見ちゃいない。心配すんな。」
あなた 「(すでに開いてるんですけどね!?)」
轟 「元気そうで良かった。」
あなた 「お、おかげさまで……?」
轟 「あなたが急に倒れたから焦った。」
あなた 「迷惑かけてごめんなさい。で、でも
爆豪くんが保健室まで運んでくれたから平気
だったよ!!帰り際寄ってくれたし!!」
轟 「…帰り際?寄った??」
あなた 「えっ?う、うん。なんかよく分からないけど……」
轟 「そう……なのか。いや、なんでもない。」
あなた 「あ!焦凍くんは訓練どうだったの?」
轟 「俺は…勝った」
あなた 「焦凍くんの個性見てみたかったな、
体力テストのときは見れなかったから。」
轟 「そんなに気にするようなもんでもない。」
あなた 「で、でも百ちゃんが焦凍くんは推薦組だって言ってたから、」
轟 「!!(八百万か…たしかあいつも推薦組か)」
あなた 「…だから、すごい個性なのかなって、」
轟 「いずれ分かる、同じクラスなんだから」
あなた 「…そっか、そうだよね!楽しみにしてる!」
轟 「明日からまた頑張ろうな」
あなた 「うん!頑張ろうね!!」
轟 「じゃあ…切る」
あなた 「はいっ。おやすみ、焦凍くん。」
轟 「おやすみ……あなた、」

電話を切った。

わざわざ連絡してくれるなんて

焦凍くんはなんて律儀な人なんだろう。

きっと育ちがいいからなんだろうなあ。


あなた 「あっ!!そういえば!!」

今日のことですっかり忘れていた。

私はすぐ投げ出されたバッグをあさる。

もしかしたら……訓練のときに落としたかも。


あなた 「……ない!!ブレスレットが、ない!!」

一気に顔から血の気が引いていくのが分かった。

なんで大切なものをこんな簡単に

失くしてしまうのだろう。自分に嫌気がさす。


あなた 「どっ…どうしよう…………!!」


明日訓練場に行って探すべきだろうか?

いや、もしかしたら壊れて原型をとどめて

いないかもしれない。それか飛ばされて

しまったとか。嫌な妄想ばかりしてしまう。

でも……もし見つからなかったら。

あなた 「お姉ちゃん……ごめんなさい。」


窓の外の夜空を見上げ呟く。

あの空の先にいる姉に。

いつも優しく誰よりもカッコよかったヒーローに。








私が奪ってしまった当たり前は

もう戻ってこない。

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