その日の夜、
帰宅するとすぐにベッドに転がった私は
メールを確認しようとケータイを開いた。
あなた 「んえっ?!?」
知らないうちに新しい連絡先が登録されている。
あなた 「な、なんで…!!」
プルルルルルルルルルル
あなた 「ひゃあっ!?」
ちょうどその後本人から電話がかかってきた。
何の用だろうか。見当がつかない。
とりあえず出なくては。
あなた 「も、もしもし…??」
轟 「体調はどうだ?平気か??」
あなた 「うん、大丈夫。……って!!
なっ、なんで焦凍くんの連絡先が私のケータイに
登録されてるの!?!」
轟 「前に一緒に帰ったとき、あなたのカバン預かってたから。そのとき。」
あなた 「そっ、そのときって……!!」
何を隠そう、登録されていたのは
轟焦凍ご本人の電話番号だった。
轟 「中身は見ちゃいない。心配すんな。」
あなた 「(すでに開いてるんですけどね!?)」
轟 「元気そうで良かった。」
あなた 「お、おかげさまで……?」
轟 「あなたが急に倒れたから焦った。」
あなた 「迷惑かけてごめんなさい。で、でも
爆豪くんが保健室まで運んでくれたから平気
だったよ!!帰り際寄ってくれたし!!」
轟 「…帰り際?寄った??」
あなた 「えっ?う、うん。なんかよく分からないけど……」
轟 「そう……なのか。いや、なんでもない。」
あなた 「あ!焦凍くんは訓練どうだったの?」
轟 「俺は…勝った」
あなた 「焦凍くんの個性見てみたかったな、
体力テストのときは見れなかったから。」
轟 「そんなに気にするようなもんでもない。」
あなた 「で、でも百ちゃんが焦凍くんは推薦組だって言ってたから、」
轟 「!!(八百万か…たしかあいつも推薦組か)」
あなた 「…だから、すごい個性なのかなって、」
轟 「いずれ分かる、同じクラスなんだから」
あなた 「…そっか、そうだよね!楽しみにしてる!」
轟 「明日からまた頑張ろうな」
あなた 「うん!頑張ろうね!!」
轟 「じゃあ…切る」
あなた 「はいっ。おやすみ、焦凍くん。」
轟 「おやすみ……あなた、」
電話を切った。
わざわざ連絡してくれるなんて
焦凍くんはなんて律儀な人なんだろう。
きっと育ちがいいからなんだろうなあ。
あなた 「あっ!!そういえば!!」
今日のことですっかり忘れていた。
私はすぐ投げ出されたバッグをあさる。
もしかしたら……訓練のときに落としたかも。
あなた 「……ない!!ブレスレットが、ない!!」
一気に顔から血の気が引いていくのが分かった。
なんで大切なものをこんな簡単に
失くしてしまうのだろう。自分に嫌気がさす。
あなた 「どっ…どうしよう…………!!」
明日訓練場に行って探すべきだろうか?
いや、もしかしたら壊れて原型をとどめて
いないかもしれない。それか飛ばされて
しまったとか。嫌な妄想ばかりしてしまう。
でも……もし見つからなかったら。
あなた 「お姉ちゃん……ごめんなさい。」
窓の外の夜空を見上げ呟く。
あの空の先にいる姉に。
いつも優しく誰よりもカッコよかったヒーローに。
私が奪ってしまった当たり前は
もう戻ってこない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!