次の日
昨日の頭痛が嘘のように回復していた。
もうなんの心配もいらない。
いつものようにお母さんに声をかけ
玄関を開けると_____________________
あなた 「んえっ!?轟くん!?」
轟 「百合野おはよう。」
あなた 「あっ…おはよう…ってなんで!!」
轟 「昨日送った身だし、もし体調悪かったら
また何かあると思って。心配で迎えに来た。」
あなた 「そっそんな…申し訳ない!!」
轟 「別に何も気にしてないから大丈夫。」
あなた 「でっでも……」
轟 「俺が好きでやってるから」
ボンッ
ああ、多分私今顔真っ赤だ。
轟くんは素直にそう言っただけなのに。
これだからイケメンはずるいんだ。
母 「ちょっとあなた?!忘れ物…って」
玄関から飛び出してきた母は私と轟くんを
一目見ると急に動きを止め、固まった。
そりゃあ朝からこんな美少年に会ったら
びっくりするわな。
轟 「どうも、あなたさんと同じクラスの
轟と言います。昨日のことがあって
心配だったので迎えに来ました。」
母 「…どうも〜あなたの母です!!
わざわざ朝からごめんなさいね〜
娘と仲良くしてやってくださ〜い」
ぞわっとするくらい甲高い声。
さっきの場面は無かったことにしたようだ。
いつも見る母の姿はない。
……っていうか今サラッと名前呼びした!?
轟 「それじゃあ…そろそろ学校に行きます。
行こうあなた。」
母 「がんばってねぇ!!」
母は私に忘れたペンポーチを渡すと
小声で耳打ちしてきた。
母 「なによ〜こんなカッコイイ彼氏がいて
なんですぐ紹介してくれなかったのよっ」
あなた 「んなっ!?違うから!!!」
母 「うふふっ期待してるわねっ」
あなた 「だから違うってば……」
母は聞く耳を持とうとしない。
母 「いってらっしゃ〜い!!」
そのまま母に満面の笑みで送り出され
我が家をあとにした。
あなた 「轟くんごめんね……
朝からお母さんうるさくて…」
轟 「? 全然気にならない。むしろ元気が
あっていいと思う。」
あなた 「!!そんな気使ってくれてありがとう」
轟 「俺は…今母さんいないから。」
あなた 「……えっ」
轟 「ふっ…そんな深刻そうな顔しないでくれ。
遠い場所に住んでるだけだ。」
あなた 「そっそうなの……?ごめんね」
轟 「あなたは心配しなくていい。」
あなた 「!!!!!!」
轟 「どうかしたか?」
なっ名前呼び……健在。
あなた 「いやっその……無理して
名前呼びしなくていいよっ」
あなた 「さっきはお母さんの前だったから
そう呼んでくれたかもしれないけど」
轟 「っ!!!!わりぃ……」
えっ……轟くん…照れてる?
耳が真っ赤……。
なんかすごい意外だなあ……。
轟 「……んじゃダメか?」
あなた 「へっ?」
轟 「…名前で 、呼んじゃダメ…?」
あなた 「(んなぁっ……!!!)」
何だこのかわいい生物は……!!!
まるで子犬のような……!!!
あなた 「いっ、いいけど……」
轟 「わかった。あなた。」
ニコッてしただとぉぉぉお!?!?
イケメンの破壊力…恐るべし。
轟 「じゃあ俺のことも名前で呼んで。」
あなた 「えっ!!それはなんて言うか、。」
轟 「……できない?」
あなた 「(ああもう!可愛い!!)」
あなた 「き、、緊張するなぁ…」
一呼吸置いてから……
あなた 「しょ…焦凍……くん?」
恥ずかしい……!!普段下の名前で呼んだり
しないから全然慣れない……!!
って……あれ?
あなた 「どっどうしたの??」
焦凍くんは頭を抱えて俯いている。
そのせいで顔が全く見えない。
轟 「わりぃ…なんでもない。」
気のせいかな…なんか赤いような、
轟 「ほら、もう校門はすぐそこだ。行こう。」
あなた 「うん……!!」
私たちは隣を歩いて校門をくぐった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。