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桜若葉にひかり射す
20
もう一度大きなため息をついて、いろいろ整理する。もう全部話してしまったほうが楽なのか。
じゃ、家族のこと。
家族?そう言えばそうゆうの聞いたことないな。
最近、家族が増えたの。
…ごめん、詳しく。
私ね、産まれた時から父親いなかったの。だけど…2ヶ月前に母親が結婚したの。
…そうゆうこと。
新しいお父さんとお兄ちゃんができた。
うまくいっとるの?
お父さんは優しい。養子縁組したいって言ってくれた。藤井を名のってほしいって。
…藤井?
うん。藤井。学校のこととかあるから、高校卒業したらって言われた。
……藤井?
お兄ちゃんになった人は藤井流星。濵ちゃん知ってる?
…流星か。知っとるよ。サッカー部の後輩やし。モテモテやったで?
…そっか。
うまくいっとらんのは流星か。
うまくいってないって言うか…うまくいかないように持っていってる。
どうゆうこと?
…ここからは誰にも言ったことない。聞いたとしても、忘れてくれていいから。
…おん。
ため息…というか、深呼吸。なんか緊張する。
私ね、1年の時に憧れてた人がいたの。…私の初恋。
もしかして…
そう。その人、私のお兄ちゃんになっちゃった。
そんなことあるんやね。
うん。だから、これ以上好きにならないように頑張ってる。なのに…
なんかあったんか?
嫌いとか、苦手な人から普通目指すって言われた。優しいの。関わってくるの。しんどいよ…
血、つながってないんやろ?好きになったらあかんの?
…うん。お母さんの幸せ壊したくない。それに養子縁組するってことは、戸籍上兄妹になるんでしょ?
…そやな。
卒業したら、私は藤井になるから…
濵ちゃんが私の目の前に箱ティッシュを置いた。今の私は涙でぐちゃぐちゃ。
気持ち、押し込めてこれからも生きていくんか?
…うん。だから、卒業したら家を出る。関東の大学受けようと思って…
ほんまにそれでええの?
…えっ?
心、壊れんで?しんどいんやろ?
しんどいけど仕方ないじゃん。お兄ちゃんで、妹なんだから…
あなたの名字ちゃん…
私は、妹。
呪文のように唱え続けた。それから村上先生が戻ってきて、早退の手続きして帰った。