第8話

🏹 episode 08 ❤
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2018/06/15 09:32
先輩の握った手は私の手を離すまいと強かった。
教室から庭までずっと握られているから今にでも腕がちぎれそうだ。
赤松 れいら(アカマツレイラ)
痛いですっ。
私が思わず顔をしかめるとパッと手が離れた。
驫木 直哉(トドロキナオヤ)
ご、ごめん。
先輩は俯いたまま歩き出した。
時々、後ろを振り返りながら。
赤松 れいら(アカマツレイラ)
直哉先輩…どうしたんですか?
思わず私は大きな背中に向かって声を出した。
だってそうだ。さっきまで私を起こっていた先輩が、急に焦った顔で私をここまで連れてきたのだから。
驫木 直哉(トドロキナオヤ)
ん、あ…
直哉先輩は隠したげに言葉を濁した。
聞いてはいけない気はしたけど、ここまで困るものだろうか。
赤松 れいら(アカマツレイラ)
いや、喋りたくなければ…
喋らなくていいですよ。と言う前に直哉先輩が振り返り細長い指をそっと前に出し、私の唇の前に持ってきた。
驫木 直哉(トドロキナオヤ)
しっ
そう言うと直哉先輩は私を抱き上げた。
赤松 れいら(アカマツレイラ)
きゃっ
声は出たが、そこまで大きくない。何故なら、先輩の手で口をおおわれているからだ。
驫木 直哉(トドロキナオヤ)
だから黙れって。
こしょこしょ、と先輩に耳元で囁かれる

そしてキョトンとする私の事なんか知らんぷりで先輩は庭にある草木で隠れた椅子に私を乗せる
驫木 直哉(トドロキナオヤ)
ここにいろ。でも、騒ぐなよ。
私が頷くのを確認したら先輩は走っていった。
直哉先輩の走った方を見ると女の人がいた。

どこかで見た事がある子だ。
真田 麻衣
あ!先輩っ!!
この声で気づく、学校の庭で、今先輩と向き合ってる女の子は麻衣だ。
でも、どうして麻衣が…。
突然の事に頭が真っ白になる。
どうして、先輩は私をここに座らせたのだろう。
驫木 直哉(トドロキナオヤ)
よーし、いい子だ。
直哉先輩は飛びっきりの笑顔で麻衣の頭を撫でた。
私は胸がズキンっと鳴り響くのを感じる。
重くて苦しくて、思わず涙が溢れた。

その場にいてもたっても居られなくなって私は思わず立ち上がり庭から逃げるように校舎内へ入っていった。

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