織原は、私の話を最後まで気を抜かずに聞いてくれた。
そして、放課後、呼び出された屋上へ来た。
榊田が、手に持っていたナイフを振り下ろした。
私は、とっさに目をつぶった。
あれ?刺さった感覚どころか、当たった感覚もしない。
目を開けると、榊田が…泣いていた。
榊田が途切れ途切れに話し始めた。
私は、榊田の返事を待たずに、言葉を続けた。
榊田が泣き崩れた。
翌日、学校に行くと、榊田に謝られた。
おそらく、昨日のことはもうふっ切れたのだろう。
榎木さんが私を、榊田に聞こえないところまで連れてきた。
まあとにかく、榊田と前みたいな関係に戻れて良かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!