「ふぁあ〜ぁ...眠い...こーち...」
「大我本当に大丈夫か?絶対昨日徹夜しただろ...」
だってレポート終わんなかったんだもん。
「お前そこまで体強い方じゃないしもう帰った方が
いいんじゃね?」
「む〜...そうしようかな...」
「帰るんだったら俺から伝えておくから。あんま無理すんな」
「こーちありがと〜...今度ラーメン奢るわ...」
「そこは焼肉とかだろ」
ただこーち頼む。寝不足だから帰ったって事は
言わないでくれ。頼むから。
なんか体調悪いからみたいな感じで伝えておいてくれ。
「じゃ、こーち頼むわ。俺帰るね。」
「おう。ちゃんと寝ろよ。」
「わかってるよ。」
やっぱなんだかんだ言って髙地って俺に甘いよな。
さっすが俺のソウルメイト。(?)
...ということで、俺は電車に乗り、最寄り駅で降りる。
歩いてると、立ちくらみがずっと続いている様な感覚に
歩くのが困難になる。やっべぇ...めっちゃクラクラする...。
家まではあと10分くらい。頑張れ俺...
...が、しかし突然目の前が真っ白になる。
あ、これヤバいやつだ、絶対そう。
体から力が抜け、そのまま前に倒れる。
「ドンッ!!」と体を強く打ち付ける音と固く冷たいコンクリートに頬を押し付ける触感の中、俺は意識を手放した__
「ん...」
目が覚めるとそこには、見知らぬ天井、見知らぬソファと
見知らぬブランケットにくるまっている俺。
...いやいやいや待て待て待て。
ちょっと待て。
「ここ...どこ?」
思わず声を発する。
え、なに、誘拐...?
しかも体めっちゃくちゃ痛てぇし!!
って、それは俺が倒れたからか...
「あ、起きました?おはようございます、」
「ひ、っ、だ、だれ?」
後ろから声がして、咄嗟に振り向く。
するとそこには__
「驚かせてしまってすみません、松村北斗っていいます。」
重ための黒髪で顔の整った、松村北斗と名乗る人物が
マグカップを持って立っていた。
「ほくと、さん?」
「はい。...びっくりしたんですよ、
歩いていたらいきなり人が倒れたんですから。」
家近かったんで連れて来ちゃいました、なんて笑う目の前の
北斗さん。笑った口元からちらりと犬歯が見える。
「そう...だったんですね、すみません、失礼な態度を取って」
「いえいえ、そりゃあいきなり話しかけられたらびっくり
しますよね。こちらこそすみません。」
礼儀正しい人だな...多分北斗さんの方が年上...だよね...?
「あ、そうだ、これ...ココアいれたんですけど...のみます?」
「えっと、はい。いただきます。」
すると、北斗さんは持っていたマグカップを目の前の
テーブルにコトッと置く。
「じゃあこれ、飲んでください。」
「ありがとうございます...何から何まで...」
「いえいえ。お気になさらず。」
めっちゃいい人だな...なんだか申し訳なくなる。
温かいココアを飲んで、心も温まった気がした。
そんな風にほわほわしていた俺は、北斗さんが後ろでニヤリ
と不敵な笑みを浮かべている事に気が付けなかったのだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。