竹内さんと一緒に体育館に移動すると、もうアップが始まっていた。
ボールが床に当たる音、バレーシューズと床が擦れて鳴るキュッという音。
久しぶりに聞く音に、心が高鳴った。
久しぶりに見る、藍のバレーをしている姿。
久しぶりに見る、有志くんのバレーをしている姿。
今この場でこの景色を見れていることが、夢のようだ。
「「はい!!」」
監督の声がかかると竹内さんは選手達のタオルを配り始めた。
ドリンクも渡し、モップがけもしている。
選手達に声がけもして、マネージャーであってもチームに参加する仲間として一心同体になっている。
気づいたことはいつもポケットにしまっているメモ帳に書き込み、今後のために活かす。
なんとなく、見られたくなかった。
恥ずかしいのか、なんなのか。
周りに迷惑をかけないように頑張らなきゃいけないと思い、まとめ始めたメモ帳。
地道な自分の努力を他人に見せるのは何か違う気がして。
藍がそう声をかけてくれたおかげで、少し肩の力が抜けた気がした。
こちらにきた柳田さんが私の姿を見るなり去っていってしまう。
「「はい!!」」
親指を立てて笑顔で走っていく藍。
その姿が、やけにキラキラと見えて。
中学生の頃を思い出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!