今日は平日であり閑静な住宅街は何一つ音が聞こえてこない。唯一聞こえるのは鳥の鳴き声だけだろう
目の前にあるのは 住宅街の中でも一際目立つ雰囲気を放つ建物。 門の隣に"如月組"と書かれてある板がかけてありその門は固く閉ざされている
如月組 が燐夜の組であるまだ、若頭らしいがほぼほぼ次期組長なのは決まっているようなものである。
この中に瀬戸がいる。無意識に口角があがってくゆく。 待つなどしなくても良いのでコンコンとノックを3回すればギィーと鈍い音をはなちながら門は開く。
タン、と自分がスニーカーで石畳をける音が響く
1歩如月組の土地に入れば 『お疲れ様ですっ!』と声を張り端にいる組員は頭を下げる
前までは「俺に頭なんて下げないでよ〜 」 と言っていたのだが『そんなこと、できませえん』と言われてしまい止める気配はないのでもう放置だ。
最近では組に入れと勧誘されるようにもなった 燐夜も面白半分で「俺の側近なれよ〜」と言ってくるのでいい加減うっとおしい。
『おつかれー』と組員に手を振り屋敷に入る玄関にいるのは燐夜の側近
『よくぞおいで下さました。燐夜はいつもの部屋に』
「ありがとぉ 古谷、俺燐夜と話す前にもう瀬戸を潰したいんだけど?」
『お気持ちは分かりますが…瀬戸雷のことで少し話があるそうで。』
といい表情ひとつ動かさず さ、あちらへ と急かす古谷は燐夜の幼いころからの世話係であり今では組長の側近を務めている。
俺も昔は一緒に遊ばせてもらった記憶がある
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『俺だけど、開けるよ』と言えば「はいはーい」と扉の向こうから緩い返答が聞こえてくる
ガラッと襖を開ければ上座で胡座をかき煙草を吸っている燐夜がいた その左右隣には燐夜の側近であり俺の幼馴染の2人がいる しかし今は勤務中だからかキリッとしている表情を崩さない
やっほー、と手を振っている若頭さんは俺の後ろをチラリと見た後
「紗季ちゃんいないの?」
『さすがに連れてこねぇだろ。今日は家で休んでもらってる』
「あら、そうなんだぁ 折角なんだから見せてやれば良かったのに」と二カッと歯をみせて笑う。見た目は爽やかな青年なのに中身はとんでもないやつであることを知っている。
「あ、お前も煙草吸う?『いらない。俺 一応未成年だからね』 …そんなヤクザに法律叩かれてもねぇ」
それもそうだけど 後々紗季にヤニ臭いと拒否られるのは嫌いだ。
『んで話って何?』
「ほんと大志は紗季ちゃんのことになるとせっかちサンなんだから」そういい彼は崩していた態勢を直し いつものニヤケ面はとれて真面目な顔でこちらを見る
『まぁ瀬戸を捕まえてはいるけどあいつの両親まぁ有名な政治家さんでさぁ、さすがに殺しちゃうと後々こっちが困っちゃうんだよね。それに紗季ちゃんの身に何かあったらいやじゃん?今回も瀬戸が反抗期で親を目の敵にしてたからそんなに大事にならなかったけど。まぁ、できてこの街からの追放と退学にして紗季ちゃんとは近づかないと約束させることくらいかな
──大志のオタノシミは出来ないよ。残念でした』
「はぁ… つまんない。折角久々に見れると思ったのに」
『ははっ、精神崩壊させて発狂している人を見て楽しむのはお前くらいだよ』
「そうかなぁ?フフッ」
『ほんと怖い義弟だわぁ』
「そんな兄さんには負けるよ」
『お、言うねぇ?』
「ふっ、それじゃ瀬戸に会いに行ってくる」
『あ、いくんだ。』
「そりゃあ、少しは痛めつけとかないと気が済まないし」
『まぁいいんじゃね。あ、帰ったら紗季ちゃんに「おいでー」って言っといてよ』
「分かった。じゃありがとね」
『はーい』
パタンと襖を閉めれば シン─としていて長い廊下が奥へ続いている
部屋の中とはうってかわって廊下は冷たい空気が漂い頬をなでていく
はぁ と小さく溜息を吐き、あいつが監禁されている屋敷の最奥を目指し歩を進めた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。