『ヨロシクね』と言われたのだから挨拶は返さなければならない。
「よろしく」
残念ながらよろしくする気はないけど…
コイツは今までで1番厄介だ。
その目には好意を寄せているわけじゃない
その目の奥にあるものは分からない。
何考えているかわからないやつ程タチが悪い。
つまり、
"めんどくさい"
その一言に尽きる。
そんな事を考えていても後ろからの攻撃は続いていて
『ねぇねぇ?』『おーい』『あれ?無視〜?』
『シャーペン貸してよ〜』
無視。なんならイヤホンをつけたいし、
コイツとは出来るなら関わりたくない。
『紗季ちゃんって髪きれ__』
でも、大志は限界だったみたい。それとも、私の髪を触ろうとしたのが癇に障ったのか
アイツ目掛けて手が伸びる
『触んな』
テノールのよく通る艶を含んでいる声。
その声は教室に響くわたる
この大志の低い声がたまんないんだよね、
私は乙女のように顔が熱くなる
でも、教室の温度は下がったみたいにみんな静まり帰っている
舞花はこっちを向いて 口をぱくぱくさせている。
金魚みたいで笑いそうだからやめてよっ
壇上で授業していた教師もハンカチを取り出してこめかみを拭ってるし
まぁ、こんなキレてる大志は珍しいからね
そんな教室に緊張感のないゆるい声が後ろから聞こえる。
「え…あっ! 2人付き合ってるの!?なぁんだ早く言ってよね、もう紗季ちゃんったら」
何なのこいつ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。