第43話

隔て
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2018/10/22 00:49
──ヤメテ これ以上私を穢さないで



目覚めて目に入ったのは見慣れた天井で
ふわり と香る匂いは大志 のだと分かった

(なんで、家に?)

と最初は疑問に思ったが 徐々に蘇ってくる記憶。

大志の部屋にある鏡の前に立ち首筋をみれば 赤くなっている点がある。


─気持ち悪い

無意識にそこをゴシゴシと擦る とれるわけなんてないのに。冷静な自分が嘲笑う


なにも出てくるものなんてないのに ただ喉に何かが引っ付いているような感覚で息苦しい
胸の当たりが締め付けられたようにいたい。
吐き出したい。

全て、すっからかんになってしまえばいいのに

ふぅ と小さく息を吐いて大志の部屋を見渡せば2人の写真やお揃いのものが見える
全く同じことをしていて少し胸の違和感が小さくなった。
そのままおぼつかない足取りでリビングに向かう
聞こえてくる大志の声
(誰かと話している)
電話なんて珍しい やり取りする相手は自分くらいしかいないと思っていたけど… その人は誰?


『ヨロシクね』

頼れる人?

『ククッ』

大志を笑わせることができる人?

『─楽しみだ』

大志に楽しみと希望を持たせる人?




─ワタシは 困らせて迷惑をかけてしまう人


要らない不安が脳内を覆う 黒い霧で"信用"の文字が霞んでいく


『う"ッ』

急な嘔吐に口元を抑える
そのまま廊下に蹲る ひやりと冷気が頬を掠めてぶるりと身震いをする。でも、その冷たさが今は心地よく感じた

ドアに体が当たりガタッと音を立てる
そんな音も今は聞こえこない

聞こえてくるのは 大志の足跡 ペタッペタッと裸足でフローリングを蹴る音
いつもは好きなのに今は 怖い。

ガチャリと音を立てて ドアは開く

『おっ』

頭上から聞こえてくる声
隣に感じる人の気配


前髪の隙間からチラッと上を除くと ビックリしたように目を丸め 困惑に眉を下げている表情の大志が見えた


『どうしたの?』
しゃがんで目線を合わせようとする

伸びてくる腕。

『紗季?』

──パシンッ


乾いた音が廊下に響く

『ッ・・・』 「あっ…」







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