第39話

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2018/09/14 10:27
鳩尾を思いっきり蹴りとばしてやったのに

そいつはのろのろ と起き上がる


しかも、飛ばされた拍子に背中を強く打ったはずだ


だが奴は
とても痛そうには見えないつらで

(きもい)

本気でこいつ頭のネジがとんでんじゃねぇのかと思った。



あいつは今はいい。

(俺の今の優先事項は紗季だ。)
そう自分に言い聞かせる



紗季のもとまで行きしゃがみこむ

「すぅー すぅー」

穏やな寝息をたてて眠っている。とてもさっきまで襲われていた奴とは思えねぇな

なんて思わず苦笑をもらす

「よっ、と」

紗季を抱きかかえる

「ん、 ・・・ たぃしぃ」


寝言でも俺を呼ぶ。それだけで俺の心は歓喜に満ちる
こんなにも俺の気分を上げ下げさせるのはこの世に紗季だけ。



さて、早く連れて帰って
はやく、消毒しないと。


目元には涙の伝った後がある
腕には強く掴まれた跡に
首にも真新しい跡 がひとつ




「・・・。」

(やっぱりアイツは…殺しておくべきか?)

さっきまで普通だったはずの視界が 赤く染まっていく

気がつけば

足はどんどんとアイツのもとはと向かっていく
歩く揺れに合わせて紗季の髪もふわふわとなびく。
鼻につくのは紗季の甘い匂いとシャンプーの香り。

それだけが俺の少しの理性を留まらせる



アイツの目の前で足をとめる

『ッ!』

なんつぅ情けない顔をしてんだよぉ


「くくっ」


思わず喉が鳴る
ああ、 今の俺の顔は酷く歪んでんだろうな。






ああ、ドウシテヤロウ。


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