大志side
これが初めてじゃない。 でもこんなに荒れるのは初めてで少しの戸惑いを覚えた。それと同時にアイツへの殺意が腹の中を巣食っていた
紗季はモテる。あの容姿に雰囲気だって惹かれるものがあるのは理解ができる
だからこそ屑が寄ってきたりするのだ
襲われかけることもあったし 俺が少し席を立てば知らない男に腕を引かれていることもあった。
その度に紗季はこうなるのだ
俺から触れられることを避ける。そらが今回は拒絶までいった
──あのときのゾワッとしたものが背中を伝った
畏怖
焦燥感
喪失感
いつもの様に抱きしめて『大丈夫』と言うことすら出来なかった
そして、その後は決まってお風呂に入る。上がってきて目に入るのは痛々しい赤くなっている肌。
触られたところを必要以上に洗うのだ。紗季は
きっと今も ゴシゴシとあの白磁のような肌を傷つくまで洗っている。そして赤くなってリビングに戻ってきて「ごめんなさい」 と謝るんだろうな
──ガチャ
『大志、ごめんなさい』
ああ、ほら。やっぱり謝るんだ
『もう、大丈夫だよ』
そんな顔で何が大丈夫なんだ。
腕や首、足が赤く染まっている 湯上りのせいだったら良かったのに。腕からは少し血が出ていて 掻きむしったことがわかった。
それが痛々しくて、見てられなくて紗季を強く抱きしめる
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。