…あれ、ここって。
何があったんだっけ…。確かヘリで運ばれてきた患者さんが緊急オペになって、それで…
ー藍沢の無線がなるー
私が点滴が終わって戻る頃には、外来は終わっていた。
…何だかんだバタバタしてた救命の1日も終わった。
ー30分後ー
ー医局に行ってー
ー仮眠室でー
私は3歳だったけど、病院で自分の意識が戻って両親が亡くなったことを改めて聞かされて、しばらく何も考えられなくなったことを思い出した。
人は突然いなくなる。もしかしたら、さっきまで普通に会っていた人にもう2度と会えなくなるかもしれない。
たった1人の大事な息子を突然失った母親の悲しみ、到底計り知れない。そんな状況で、私たちにできることは何なんだろう…。
ー眞子の携帯が鳴るー
「もしもし、久しぶり。たまたま東京来てるから、明日あたり会いに行くわ!何年振りかな?8年くらい?楽しみにしてる。」
懐かしい声にどこか心が落ち着く。
…大切な人を失った悲しみは、当たり前だけどそう簡単に乗り越えられるものじゃない。でも、きっと側にいる。その悲しみや辛さ、痛みに寄り添いたいと思ってくれる人が。
だから人は1人じゃ生きていけない。誰かがいるから強くなれる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!