第4話

ったくもう……!
630
2018/12/24 10:09
あれから二週間が経ち、入学式の朝。

目覚まし時計の音で時間通り起床し、寝巻きから制服に着替え、リビングに降りる。

キッチンには見慣れた姿があった。

「おはようございます」

「お。はよ、ハルチカ!」

ニコッと笑いかけてくれる、優さん。

シェアハウスでは、食事は朝昼晩すべて優さんが作ることになっている。

「ちょうどできたとこだ。ほい」

椅子に座った私の前に、朝食が乗った皿を置いてくれる。

今日はフレンチトーストらしい。

「美味しそう……私これ大好きです!」

「だろうな。ん、ハチミツ。かけるだろ?」

「はい……え?知ってたんですか?私が優さんのフレンチトースト好きだって……」

ハチミツの入った小瓶を受け取りながら尋ねる。

優さんがふっと声もなく笑った。

「最初に食べた時自分で言ってたろ」

「……まぁ、確かに。覚えててくださってありがとうございます。いただきます」

合掌してナイフとフォークを手に取る。

フレンチトーストを切り分け、口へ運ぶ様子を、優さんは向かいの席から見つめてきていた。

「美味しいです……!優さん大好きです!」

「はは、嬉しいけど、他の男には簡単に好きって言うなよ?勘違いされるぞ」

「言いませんよー。そんな」

そこでふと、ダイニングテーブルに置かれている私たち以外の朝食に気付き、げんなりする。

「……あの人たち、今日が入学式だって分かってるんですかね?」

すると、優さんも心なしかげんなりした。

「……さぁ、どうだろうな。でも放っといたら昼まで寝てそうだよな」

「ったくもう……!」

荒々しく席を立った私に、優さんが「ごめんないつも」と苦笑して言った。

優さんのせいじゃないですよ、と笑顔を返し、リビングを出て二階への階段を上る。


シェアハウスを始めて二週間。シェアメイトについて分かってきたことはたくさんある。

その一つが――優さん以外みんな、朝に弱いことだ。

プリ小説オーディオドラマ