第5話

起きろ
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2019/01/06 03:10
「起きろ藍!!」

藍の部屋のドアを開けて大声で叫ぶ。

眠っていたのだろう藍が、ベッドの上でビクッと体を揺らした。

「……何?まだ8時前じゃん……」

「今日入学式!藍、二年生でしょ!新入生私たちより早く行かなきゃいけないんじゃないの!?」

「……あー……。だる」

もぞもぞと布団の中で動いた後、眠そうな藍がベッドから降りる。

藍とはプロステで意気投合して以来、しょっちゅう一緒にゲームをする仲だ。基本的に無表情だけど、優しいし、良い奴。

私はドアを閉め、次の部屋に向かった。

「理央くーん、起きてー……」

ゆっくりとドアを開け、その隙間から恐る恐る中を覗く。

この人の部屋にだけは昼夜を問わず絶対に入らないよう優さんから言い聞かされている。なぜなら、寝起きの彼は――

「わっ!?」

いきなり強い力で腕を引かれ、強制的に室内へ招かれる。

背後でバタンッと音がしたと思えば、ドアに無理やり押し付けられた。

「おはようハルチカ。入学式なんかサボって、俺とここにいろよ。気持ちよくしてやるから……」

理央くんの顔が近付いてくる。

ちょ、ちょっと待っ……!!助けてー!!

「!」

一瞬体が浮遊感に襲われて、一気に後ろに倒れていく。

やばい、と痛みを覚悟した瞬間、誰かが私の体を受け止めてくれた。

「朝からめんどくせぇぞ理央。起きろ」

声で分かった。

ドアを開けて私を助け、今、私を立たせてくれた人が、誰か。

「叶……。起きてるよ」

「ならさっさと下降りろ。優にチクられたいなら別にいいけどな」

「!!」

理央くんがハッとし、普段のかわいい顔つきに戻ると焦ったように駆けていく。

分かったこと2。優さんを怒らせるようなことはできる限り避ける。

怒った優さんというのが相当怖いのだろうか。まだ見たことがないから、単なる推測だけど。


ため息をついて踵を返した叶の背中に、私は声をかけた。

「叶!その……ありがと!」

叶が振り向いてきて、ニヤリと笑う。

「貸し1」

刹那、叶に抱いていた感謝の心はどこかへ吹き飛んでいった。

……こいつ……ホンット腹立つ!!


叶はイケメン揃いのシェアメイトの中でも多分一番かっこいいのに、とにかく性格が悪い。

私が叶に「ありがとう」と言うたび“貸し”だと言って、その数だけ何かしらのことを命令してくる。しかもそれはなぜか、他のシェアメイトにはせず私限定なのだ。

今度は何をやらされるんだろ……あぁもう、こっちは素直にお礼言ってんのになんなの!!

沸き上がる苛立ちを必死に抑えて、叶のあとを追う形で歩き出した。

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