第25話

〈side 叶〉-いつ気付くんだろうな
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2019/02/09 16:02
新しいシェアメイトがシェアハウスに加わって、約十日。

佐藤遙悠という、苗字の割に変わった名前のその女は、今、俺の隣でカートを押している。

「えーっと……あと何だっけ」

「醤油」

「おっけー!」

ハルチカはニコッと笑って、結構多いんだなーと呟きながらカートに載せている買い物カゴの中を覗き込む。


春休みも残り僅かとなった日の夕方。予定がなくリビングでくつろいでいた俺とハルチカは、優に頼まれてシェアハウス近くのスーパーまで買い物に来ていた。

優は滅多に人を頼らないのだが、さっき帰ってきた時のあいつはかなり憔悴していた。

『ハルチカ……叶……悪い、買い物に行ってきてくれねえか……?』

『ど、どうしたんですか優さん!?もちろん行ってきますけど!!』

『はは、ちょっとな……。サンキュ……』

ハルチカの頭を撫でてやる気力もないようで、力なく笑うと優は鞄を床に放ってソファに倒れ込んだ。

そしてそのまま気絶した。

『えっ、優さ……!?優さん……!?』

『大丈夫だっつの。たまにある』

俺は優の鞄の側にしゃがみ、迷いなく開けた。

中から財布を掴み上げ、一枚のメモを取り出して上着のポケットに突っ込み、あとは元通りにする。

優はお人好しで、決して騙されやすいわけではないが、信頼している人が相手の場合、結果的に罠にかかってしまうことがある。

今回もきっと、普通に男だけで遊ぶのだと思っていたら合コンだったとか、そんなところだろう。いつしかハーレム状態になってしまって、迫ってくる女達をお人好しなために上手くあしらえず、精神を削られていく優の姿が容易に想像できる。

まぁ、この顔でこの性格だから、仕方ない。

『行くぞ』

『う、うん!』

一瞬優を心配そうに見やってから、ハルチカは俺についてきた。



そうして経緯を思い返した後、大小様々な醤油の瓶を前に唸っているハルチカへ目を注ぐ。

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