あの日から、私は先輩と2人で踊っている動画を見て、毎日欠かさずに練習した。
そのおかげか、発表は大成功。
見に来ていた友達にも、涼先輩にも褒められ、
自分の少ない実力を全て出し切ることが出来たと、自分でも思うことが出来た。
何よりも嬉しかったのは、涼先輩本人に
と言われたことで。
私は後悔を残すことなく先輩を部活から見送ることが出来た。
が…しかし。
唯一、私に残された先輩への想いだけは解決していなくて。
涼先輩が引退したダンス部は、一言でいうと味気無かった。
いつも見ていた人が、目標にしていた人がいなくて。
成長を見て欲しい人も、褒めてもらいたいって思う人もいなくて。
いなくなってから初めて自分がどれだけ先輩のことを考えていたかを実感した。
何度か、梨咲にこれからどうするつもりかを問われたことがある。
梨咲は先輩に気持ちを伝えろって言ってくるけど、
そんな勇気持ち合わせてないし、もしあったとしてもチャンスがない。
この気持ちは殺してしまうしかない。
私がそんなことを悩んでいる間に、
時間は一刻一刻と過ぎていく。
先輩と同じ場所にいた時間が遠くなって、
先輩と別れる日が近付いてくる。
どうにかこの気持ちに蹴りをつけなくてはいけない。
そんなことを考えながら何も出来ない日が続き、
ついに、その日がやってきた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。