私は杖を取りだし、頭にぽん、と打ち付けた。
あくまでマジックだと思っているようで、悲しくなった。
私は全てを、話した。私が魔法界の人間だということも、記憶がなくなるということも、魔法界に行くことも、すべて。二人の顔が、段々絶望に変わっていく。私だって、離れたくないのに。
最初に口を開いたのは、隼翔くんだった。
私は、姿を人間界の姿、『菜々』の姿に、変えた。
私はさめざめと泣く結花のかたを持ち、精一杯の笑顔をした。
そして私は、隼翔君の前にたった。
この期に及んで恥なんてなかった。だから、言いたいことを全部言った。
頭の中に、お母様の声が聞こえた。
私は頭にぽん、と杖を優しく当てた。すべて、すべての、記憶が消えていく。話したこと、結花のこと、隼翔くんのこと……すべて、頭から消えていく。
__嗚呼、あの人は誰なの?なぜ私を見ているのかしら……いや、そんなことより魔法界に帰らなくては。
○
レナーテとあたしはフィンの騒動のあと、魔法界の王女になった。……いや、嬉いっちゃ嬉しいんだけど、レナーテの様子がなんだかおかしい。まだ人間界のことを覚えているのではないか、とはらはらしてしまう。
完全に記憶が消えても気持ちだけは人間の時の記憶が残っているらしく、レナーテはたまにこんなことを言う。
……レナーテは人間界ではドジな子だったから、記憶の処理も曖昧だったのかも知れないな。
思わず口に出していた。
すると、レナーテはテーブルに置いてある杖を持とうとして、足を滑らせた。その反動で杖が揺れ、勝手に魔法を出した。ぴゅんっと音がして、壁を、焦がした。
.
そう言って、レナーテは笑った。その顔は、レナーテ、というより、『菜々』に近かった。
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満を持して最終回を出しました!遅くなりすみません( ;∀;)
この小説の感想があれば、コメント欄に書いてくれると嬉しいです!
この作品の第2部を出すことが決まりました!
その小説を出したら、この小説と「ロコンとゆる雑談!」でお知らせするので、よろしくお願いします!
ちなみに、この小説と第2部に
#ドジな私が魔法使いシリーズ
というハッシュタグをつけました!本当は「ドジな私が魔法使いになるとこうなります。シリーズ」にしたかったんですけど、文字数が足りませんでしたぁあ!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。