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第1話

Prolog
37
2020/12/17 22:40
 春のうららかな風が、制服の中をするりと抜けた。暖かな陽射しを反射しながら、きらきらと桜の花びらが散っていた。
風ではためくスカートを片手で押えながら、鳴海陽芽_なるみひめ_は、ぐっと背伸びをした。

鳴海 陽芽
鳴海 陽芽
うー……。頑張れる自信が無い……。
はぁと小さくため息をついた。そりゃ、今日から通う学校、すごく楽しみにしてたし、赤のスカートに大きなリボンの可愛い制服に手を通したとき、すごくわくわくしたし高揚感もあった。でも、だからといって、この緊張は学校のシルエットが近づくにつれ高まっていくのもまた事実なのだ。

(どうしよう……!めっちゃ緊張する……。)
でも、まるで学校に向かう皆んなに平等に風が吹くように、きっと緊張しているのも皆んな平等なんだ。陽芽は、そう自分に言い聞かせながら手足を前後に動かした。
???
???
あの。
???
???
このハンカチ…君のですよね??
不意に、後ろから少年が陽芽を呼び止めた。見れば、同じ高校のブレザーを着ている。校章の色を見ると、おなじ1年生だった。そして、彼が差し出す梅模様のハンカチは、確かに陽芽のもので、陽芽はおずおずと受け取った。
鳴海 陽芽
鳴海 陽芽
そうです……!わ、私のです……!
鳴海 陽芽
鳴海 陽芽
あ、……ありがとございますっ!!
ぺこ、とお辞儀すると、陽芽はいたたまれなくなり、先程の緊張も忘れまっしぐらに校舎にダッシュした。周りの驚く表情なんて気にならなかった。





ただ、なぜか心臓がドキドキしていた。ダッシュしたからだろうか。いや、違う。そんなドキドキじゃない。もっとなんか、からだじゅうがあつくて、すごくやる気がみなぎってる。制服に腕を通したときとは比べ物にならないくらいの高揚感。ハンカチを差し出す彼が忘れられなかった。


(やばい、どーしよ……)



もう薄々わかっていた。そして、心がそれを解りたいと叫んでいる。このドキドキの正体を。



鳴海 陽芽
鳴海 陽芽
(初恋……だ……)
そう頭の中で理解すると、ドキドキがもう止まらなくなっていた。それでも、良かった。


これが、初恋ってやつなんだ。

これが、一目惚れってやつなんだ。








































作者
作者
はじめましてこんにちは。

読んで下さりありがとうございます。
この物語はれるりりさんのスペシャルガールという曲を基に作っています。楽しんで頂けたら幸いです。

ちなみに、鳴海陽芽は鳴花ヒメ、七瀬翠詞は鳴花ミコトを基に作っています。ミコトが男の子設定になってるのはストーリー上そういう設定が良かったからです。

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