第9話

俺の気持ち
67
2021/03/04 06:04
カンタside




____いや、なんで?





さっきまであなたと2人きりだったはずの教室に、トミー。




いや、別に何もおかしくない。


ノートを借りに来た、ただそれだけで。






でも___
トミー
あ、この授業の時絶対眠かったやん(笑)
トミー
ミミズみたいな字になってる(笑)
あなた
もう、うるさいなあ!!
文句あるなら返してよー
トミー
ダメでーす
あなた
もう!


にししって笑うトミーと、頬をふくらませてトミーを小突くあなた。



なんだか、凄く嫌だ。






さっきだって____。
トミー
悪ぃけど数学のノート貸してくんない?
あなた
えー、また?
トミー
だってあなたのノートまじで分かりやすいんだもん


何回見ただろう。


数学のノートを貸してくれとねだるトミーと嫌がるあなたの図。

あなた
ケチだから貸してあげませんー
トミー
あ、逃げたな、ずりぃ
あなた
逃げてるのはトミーでしょ!!
そろそろちゃんと勉強に向き合いなさい!
トミー
いやちょっとうるさめのおかんやん
あなた
なに?!老けてるって言いたいの?!
トミー
ジョーダンだって(笑)



ポンッ__



トミーがあなたの頭に手を置いた。





待ってよ、いつもはそんなんしないじゃん


あなたに触んなよ…



そんな言葉ばっかりが頭の中に羅列されていく。


トミーは大事な友達で、あなたもまた友達で。









友達と友達が仲良くしてるなんて、俺にとっては嬉しいことじゃんか。



なのに、なんで俺こんなにモヤモヤしちゃってんの?




”友達なんだから、なんでも話してよ”





さっきあなたにそう言われた時、”友達”って言葉がやけに鈍く俺の脳内に響いた。


いや、間違いないでしょ。


俺とあなたは友達で。








間違いない、はず、なのに_______。













トミー
カンタ、帰ろーぜ


あなたが友達の小豆ちゃんと教室を出ていった後、俺はトミーに声をかけられた。
カンタ
う、うん
俺はトミーに続いてそそくさと歩き出す。





トミー
あなた、誘わんくてよかったの?
カンタ
え、何を
トミー
帰り
カンタ
あー、まあ、
一緒に帰ったことないし
カンタ
てか俺が誘うのも変じゃん
トミー
なんで?
カンタ
別に、ただの友達だし
あなただって他の男に変に勘違いされちゃ可哀想じゃん
トミー
お前はあなたと一緒に帰りたいって思わないの?
カンタ
え、それは、
カンタ
…別に、お互い帰る相手いないとかだったら一緒に帰りたいけどさ
トミー
そうじゃなくて
トミー
お前はあなたの隣歩く男になりたくないのかって聞いてんの



驚いて、さっきまで逸らしていた目を合わせる。



トミーの顔は真剣だった。



違う、別に俺はそんなつもりじゃ
カンタ
別に、俺は
トミー
そっか
トミー
じゃあ、俺あなた貰ってくけどいい?
カンタ



頭の中が真っ白になる。



カンタ
なんでそれを俺に聞くの、?
トミー
だってお前、あなたと仲良いし
トミー
なんとなく気があるように見えたんだけど、俺の勘違いだったか
カンタ
えっ…
トミー
まあお前がいいなら、俺が気持ち抑える必要もないな
トミー
ま、お前がどう答えてようと、譲る気なんてなかったけどな!!


トミーはそう言ってニカッと笑う。




へぇ、そっか、そうだったんだ。


トミーは、あなたのことを本気で__。



いいじゃん、トミーがどうしようと俺が口出しする筋合いもないし、大事な友達の恋なんだから応援しなきゃ。







そう、思ってるはずなのに。











俺はトミーと別れた後、ただいまも言わずに自分の部屋に駆け込んだ。



そしてそのままベッドにダイブして枕に顔をうずめる。





トミーは、あなたのことが好き。


もしかしたら、あなたもトミーのことが好きかもしれない__。




胸がチクリと痛む。

なんで俺、勝手に傷ついてんの



胸の中で、ある気持ちが込み上げてくる。

ずっと気付かないフリをしていた、本当の気持ち。








もう、気付かないフリをするわけにはいかなかった。







情けないな、本当。


友達に宣戦布告されてからこの気持ちを認めちゃうなんて。



















俺はあなたが______
カンタ
好きだ、















ぽつりと呟いた俺の声が、虚しく響いた____。

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