カンタside
____いや、なんで?
さっきまであなたと2人きりだったはずの教室に、トミー。
いや、別に何もおかしくない。
ノートを借りに来た、ただそれだけで。
でも___
にししって笑うトミーと、頬をふくらませてトミーを小突くあなた。
なんだか、凄く嫌だ。
さっきだって____。
何回見ただろう。
数学のノートを貸してくれとねだるトミーと嫌がるあなたの図。
ポンッ__
トミーがあなたの頭に手を置いた。
待ってよ、いつもはそんなんしないじゃん
あなたに触んなよ…
そんな言葉ばっかりが頭の中に羅列されていく。
トミーは大事な友達で、あなたもまた友達で。
友達と友達が仲良くしてるなんて、俺にとっては嬉しいことじゃんか。
なのに、なんで俺こんなにモヤモヤしちゃってんの?
”友達なんだから、なんでも話してよ”
さっきあなたにそう言われた時、”友達”って言葉がやけに鈍く俺の脳内に響いた。
いや、間違いないでしょ。
俺とあなたは友達で。
間違いない、はず、なのに_______。
あなたが友達の小豆ちゃんと教室を出ていった後、俺はトミーに声をかけられた。
俺はトミーに続いてそそくさと歩き出す。
驚いて、さっきまで逸らしていた目を合わせる。
トミーの顔は真剣だった。
違う、別に俺はそんなつもりじゃ
頭の中が真っ白になる。
トミーはそう言ってニカッと笑う。
へぇ、そっか、そうだったんだ。
トミーは、あなたのことを本気で__。
いいじゃん、トミーがどうしようと俺が口出しする筋合いもないし、大事な友達の恋なんだから応援しなきゃ。
そう、思ってるはずなのに。
俺はトミーと別れた後、ただいまも言わずに自分の部屋に駆け込んだ。
そしてそのままベッドにダイブして枕に顔をうずめる。
トミーは、あなたのことが好き。
もしかしたら、あなたもトミーのことが好きかもしれない__。
胸がチクリと痛む。
なんで俺、勝手に傷ついてんの
胸の中で、ある気持ちが込み上げてくる。
ずっと気付かないフリをしていた、本当の気持ち。
もう、気付かないフリをするわけにはいかなかった。
情けないな、本当。
友達に宣戦布告されてからこの気持ちを認めちゃうなんて。
俺はあなたが______
ぽつりと呟いた俺の声が、虚しく響いた____。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!