第6話

回想
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2020/04/11 01:04
トミー
俺A組。
お前は?
カンタ
俺B組だわ
トミー
分かれちゃったな
カンタ
そうだな、
トミー
まあクラスが違っても俺らは変わんねぇから
カンタ
そーだなっ


俺はクラス発表を見ながら深く息をついた。



トミーとクラスは分かれちゃったけど、
きっとトミーの言葉に嘘はない。
きっと俺たちは今まで通り変わらずいられる。


そんな確信があった。









トミー
じゃあ、また後でな
カンタ
うん、帰る時声かけるわー
俺はトミーと別れ、自分の教室に向かう。


俺は「B組」と書かれた教室の扉を開く。
えっと、俺の席は…と
黒板に張り出された出席番号と自分のものを照らし合わせながら自分の机を探す。
俺の机は…窓側から2列目の1番後ろの席だ。
隣には、女の子が座っていた。



あれ…あの女の子…!!!!



その子は、紛れもなくさっき話した女の子だった。






カンタ
隣、よろしくね
俺はさりげなく彼女に話しかける。
あなた
えっ!
すると彼女は、肩をビクッと震わせてから驚いた顔をしてこちらを振り返った。

この子…やっぱり、知っている気がする。



あなた
え、さっきの…?!
カンタ
驚きすぎ(笑)
あなた
あっ…
彼女が恥ずかしそうに顔を背けるので、微笑ましくて思わず頬が緩む。
カンタ
えっと…佐藤寛太です。
よろしくね
俺は軽く自己紹介しながら席に着いた。
俺の名前を聞いた途端、何故か彼女の顔色が変わった。
凄く驚いた顔をしている。
あなた
…え、
あなた
佐藤…寛太…?
カンタ
どうかした?
不思議に思って聞いてみると、何かひらめいたのか、彼女の顔がパッと輝いた。




その顔を見て、少しだけ心臓がとくんと跳ねる。
あなた
佐藤くん、私…あなたっていうんだけど
あなた
覚えて…ますか?




その瞬間、体に電流が走ったような気がした。

俺の中で、何かが腑に落ちたような、そんな感覚だった。



そうだ、彼女は__



彼女とは、小学校の頃の同級生だった。
正直、俺と彼女はそれほど仲が良かったわけではない。




彼女は、人がやりたがらないことでも、自分から率先してやるようなタイプだった。
花瓶の水を入れかえたり、ゴミが落ちていたら拾ったり、働かない係の代わりにプリントを配布してくれたり…。


しかも、彼女はそれをひけらかしたりしなかった。
正直、彼女の気配りに気づいていたのは俺だけだっただろう。
それは、当たり前にできることじゃない。
そんな彼女に、俺は憧れに近いものを抱いていたような記憶がある。







ふと彼女を見ると、小学校の頃は長かった髪が、今では肩上でバッサリと切りそろえられている。


不覚にも少しドキッとしてしまった。



小学校の頃よりずっと綺麗になったあなたさんの笑顔を見つめながら、俺は密かに、これから始まる高校生活に淡い期待を抱いていた___。

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