前の話
一覧へ
次の話

第1話

Moon night ( 山田涼介 )
528
2019/09/30 11:30

その日は 満月だった 。







仕事から帰る途中 空を見ると 、 綺麗なまん丸お月様がこちらを向いていた 。
今日は散々だったなと ため息をつく 。 上司がおらず 、自分がリーダーシップをとらなければならないという 過酷なもの 。






「 お月様 、 俺 、 この仕事 向いてるんですかね 、」





返事など 帰ってくるはずもないのに 、 話しかける俺 。 ふは 、 と 笑えば白い息が出てくるような寒さで 、 手がかじかんでいた 。


家へ着くと 、 まず暖房をつけた 。窓には水滴が所狭しとくっついている 。 質素な部屋 。 生活感をあまり出したくない俺は 、 リビングに テーブル,イス,テレビ そんなものしか置かないのがルール 。



「 さむ 。 鍋でいいや 。 」




仕事散々で 料理する気なんて出るわけがなく 、 適当に余ってた食材を入れて 煮込むだけの 鍋にした 。

寒いから ちょうどよかったけどさ 、



「 いただきます 。」




いつも通りに 1人でご飯を食べる 。 誰かと話したいとか思わないのってよく言われるけど 、 1人も意外に気が楽でいいんだよねこれが 。 人参や キャベツ その他諸々を入れただけなのに 、 とてつもなく上手く感じるこの鍋 。


泣けてきた 。




「 俺って 、弱いな 。 ダメだわ 、」



こんな自分に 呆れていた 。 彼女なんて出来てたらもっと大変だろうなって 。 今はいいかな 、 彼女は 。 重そうだし 。



その時 。

いきなり 目の前に 女性が現れたのだ 。 カーテンが風で揺れる 。 このマンションの窓から現れた女性 。 ありえねえ 、 そう思いながらも 女性を見ていた 。









『 1人鍋って寂しくない ? 私 、一緒に食べたげる 。』







俺は 、女性から 食事のお誘いを 頂いたようだ 。

プリ小説オーディオドラマ