第6話

心配
1,116
2018/08/22 08:50

結局そのまま8時間の緊急オペとなった。
長時間のオペは良くあるが、事前に予定として決まっているのと緊急オペとではこちらの疲労具合が違う。
もちろん1番頑張っているのは患者さん自身。
本当によく頑張った。
しかし精神的なものもあり、
あなたも疲労困憊といった状態だった。

あなた
お疲れ様

容体が落ち着いたのを確認して病院を出たのは翌日の夕方であった。
手術後もしばらくは様子見で病院にいるつもりだったところに、子どもの体調不良で急遽当直を代わってほしいという同僚からの電話。
どうせいるのだからと
あなたが代わった。
おかげで2日連勤のほぼ無睡となったが、明日は休みだ。
今日はのんびりしよう。

スーパーに寄り、普段は買わないような高い肉でも買ってみる。
今日はパーっとしよう。

そこで、何に対してパーっとしたかったのかを思い出した。
緊急オペの成功はもちろんだが、憂さ晴らししたかったんだった。

スマホをずっと見ていなかった。
自宅に帰ったあなたは部屋着に着替えながら電源を入れる。
着信とLINEが山のようにきていた。
全て、二宮。
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二宮和也
ごめん。電話出て
二宮和也
話を聞いてほしい
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最初はそういった内容だったが、あまりにも長時間あなたからの返信もなく、既読すら付かなかったことから別の意味で心配になってきたらしい。
昨夜も帰宅予定だったのにも関わらず、帰らなかったのだし。
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二宮和也
なんかあった?
二宮和也
ごめん、俺に対して怒ってるだけだとは思うんだけど、何か事故とかじゃないよね?
二宮和也
心配だから、せめて、大丈夫かだけでもLINEください
二宮和也
あなたほんとごめん。
連絡ください。
あなた
仕事でした。なんでもないです。
オペに当直にとかれこれ1日近くスマホを見ていなかった。
電源を落としていたから事故にでも巻き込まれたのかと思ったのか。

ごめんとはどういうことだろう。
やはり、そういうことなのか
取り敢えず、これだけ。
まだ詳しく話をする気力はない。

二宮はスマホを持って待ち構えていたのだろうか、あっという間に既読が付き返信がきた。
二宮和也
良かった。あなたが無事で。
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そういえば彼は今何処にいるのだろう。
家にはいなさそうだが、仕事だろうか。

彼から貰ったスケジュールを確認すると、昨日から泊まりで大阪に行ってるらしい。
今日も大阪に泊まって明日午前中に帰ってくる予定になっている。
そもそもあなたが昨夜帰らなかったことは知らないのか。

とにかく、今日は二宮が帰ってこないことが分かった。
少しほっとしてしまう。
あんなに会えることが嬉しかったのに、今はまだ、会いたくない。
会った時は、きっとサヨナラを告げられる時だ。

お隣で住み続けるのは辛いかもしれない。
引っ越しを考えるべきか。

とにかく疲れた。
食事にしようか。
それとも風呂が先か。

しかしぼんやりと考えながらソファに腰掛けたのがいけなかった。徹夜にオペに今回の件。
あなたはあっという間に眠りの中に落ちていった。

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