医師になって数年。もう慣れた。
と思ってた。
慣れることなんてなかった。いつまでたっても死は辛い。
死亡診断書の作成が終わったのが
午前2時。
結局仮眠をとる事もなく、朝を迎えた。
日勤の医師と交代して病院を後にし自宅に着いたのが7時過ぎ。
眠気は無かった。
眠るよりも、何か動いていたかった。
溜まっていた洗濯物をたたみ、洗濯機を回す。
シーツも久しぶりに洗濯に入れ
冷蔵庫の中にあるもので作れるものはとしばし考え、ハヤシライス。
好きな食べ物。
シーツをベランダに干す頃には、少し、気も晴れてきた。
青空
風が多少あり,気持ちいい
不意に声をかけられた。
ここは高層マンションのベランダ。
一人暮らし。
特殊な造りのマンションのため、あなたの部屋とは隣の部屋しかベランダが繋がってない。
声の主は隣人ということになる。
手すりに寄りかかり覗き込むと、そこにはやはり声の主がいた。
こちらを向いていることからも、あなたに話しかけてきたようだ。
ああ信じられない。
隣人が、あの嵐の二宮和也だなんて。
そして今、会話をしているなんて。
ずっと、ずっと憧れて大好きだった人がここにいる。心臓が飛び出そうだったが、彼も隣人にキャーキャー言われたくないだろう。
そんな,生のアイドルスマイルをずっと向けないで…
本気か。この人は
そう言うとスルリと部屋の中に戻って行ってしまった。
この人は全く知らない女性の部屋に来て手料理を食べるつもりなのか。
大丈夫なの?
そんなこんなで,考えてると
呼び鈴が鳴った。
ガチャリと開けると、そこにはやはり二宮がいた。
ボサボサの頭。上下スエット。
完全に部屋着
ドアを大きめに開けると
するりと中へ入ってった
そこではたと気がつく。
部屋の掃除はさっきしておいてよかった。
が、自分がひどい格好だ。
仕事柄肌や身体が敏感な人と触れ合う。
なので基本ファンデーションも塗らず、アイメイクとリップのみで仕事をしている。
そう出来るようにスキンケアには気を付けているし、ありがたい事に肌は綺麗な体質らしい。
褒められる事が多い。
だからスッピンでもフルメイクと大して変わらないのではあるが、自分の気持ち的には大きく違う。
そして格好も掃除やらし易いようにとカジュアルな普段着だ。
憧れの人。
綺麗な格好で居たい。
ん?言葉が詰まった
そうか。分かったぞ。
これはドッキリだ。
番組の企画とかでなんかあるんだろう。
どこからかテッテレーの音楽と共に例の看板が出て来るんだな。
分かったぞ…!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。