『トントンは空を見たい、
なぜなら幸せになりたかったから。
みんなが話してくれた空の話は全てが美しく、
なによりも見た者全てを幸せにする。
だから、みんなの語ってくれたこの空の綺麗さは
僕を幸せにする引き金になってくれると信じていた。
嗚呼、美しい。
僕が想像していたものよりも遥かに美しかった。
空いっぱいに広がる『水色』の朝空。
なによりも輝いている深い『青色』の夜空と
ほかの良さも活かしながらも輝ける『黄色』の星空。
暖かく優しい『橙色』の夕空。
ぽたぽたと雫を落とす『灰色』の雨空。
先程の水色を支える『紫色』と『桃色』の空。
そして、
十人十色に輝く個性に満ち溢れた
『虹色』の雨上がり後の青空。
美しい。
みんな、僕の心の中で美しく輝いている。
今まで、本当の姿を見ることはできていなかった。
でも、ずっとそばにいてくれた。
だから、
次こそはみんなの姿をちゃんと目に焼き付けよう。』
僕は目を閉じ、考えた。
ずっとみんなのそばで笑っていられる未来を想像しながら、耳を澄ます。
休憩し終わったとシッマはもう一度どこかへ走り出す。
その後ろをみんなついて行ってるのかな。
僕の周りはしーんとしていて、僕一人だけが残っているのだろうか。
でも、もう僕はひとりじゃない。
みんながいるから。
たとえ、どんなに遠くにいても、僕らの絆は強くて硬いんだ。
そんな強くて硬い絆のあるみんなと一緒にいられる今の僕は、
世界で一番の幸せ者なのかもしれない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。