第19話

第十六章 〜真実を明らかに〜
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2021/06/29 11:00


僕は何度も涙をこっそり止めようと顔に手をやり、


顔を隠すようにした。







けど涙は止まらない。
トントン
なんで……なんでっ…止まらないの…


僕は必死に涙を拭き取ろうとする。


こんなぐしゃぐしゃな顔、

みんなに見せられるわけないもん。








そうもがいている時、グルッペンは僕の名を呼んだ。

グルッペン
トントン、


先程まで隣に立っていたグルッペンは

静かに涙を拭こうとする僕の隣に座ると、



改めて口を開き直した。


グルッペン
それはお前が幸せだと感じたからなんじゃないか
トントン
しあわせ…
グルッペン
あぁ、だから無理に涙を止めようとしなくてもいいんじゃないか
トントン
…っでも、、みんなにっこんな顔をっ…
グルッペン
大丈夫だ、
グルッペン
あいつらなら、
グルッペン
もうとっくに草原で裸足になって走り回ってるから


そうグルッペンは太陽の方を指して言った。




僕は言われるがままに指の方向に視線をやった。


そこには誰が見ても楽しそうと思えるくらいの笑顔のみんながいた。








雨の降った後で草原も濡れているというのにも関わらず、

全力ではしゃぐシッマと





手を引っ張られている

別にはしゃぐ気はないという顔をしているが、

そこはかとなく楽しそうなショッピ君。






巻き込まれてショッピ君に手を引かれている

苦笑いのエミさんと





楽しそうだからといって

それについて行くニコニコのゾム。





その後ろをルンルンでスキップをしている大先生と





嘲笑あざわらうかのようにして楽しそうなシャオロン。





保護者のように見守りながらついて行くオスマンと





呆れたような顔をしているが結局楽しそうにしているロボロ。





みんなの周りをクルクル行き来するチーノ。








そして、僕の隣で笑ってくれるグルッペン。








みんなからは沢山の幸せが溢れていた。




もしかしたら、こんなにも幸せそうなみんなの傍で

笑っていられる僕はずっと幸せだったのかもしれない。





勝手に自分は不幸な人間だと決めつけて、



周りに迷惑ばっかかけていただけだったのだろう。


トントン
ごめんな…グルさん。
トントン
僕はお前らに迷惑ばっかりかけて_
グルッペン
うーん、許さないっ
トントン
えっ…
グルッペン
俺はお前に謝って欲しくて
グルッペン
そんなことしたわけじゃないんだ。な?
トントン
・・・・・。
グルッペン
おいおい、こういう時は泣きながら前に俺に言った“あの“言葉だろ?
トントン
なんのことですかぁ?
グルッペン
とぼけても無駄だぞ
トントン
はいはい、僕の嘘はお見通しなんですもんね
グルッペン
まぁな
トントン
ありがとう、グルッペン。
トントン
僕を助けてくれて。


僕がそう言うとグルッペンは立ち上がり背を向けて言った。

グルッペン
うん。
グルッペン
…俺以外にも言っとけよ。
グルッペン
あいつらがいたから俺もお前の助けになれたんだし、
グルッペン
俺だけじゃきっとお前を救うことは出来なかったからな
トントン
うん、そうだね。あいつにも感謝しないとな
グルッペン
よしつ!じゃあ俺らも行くかっ!!

グルッペンはそう言うと、ぱぱっと靴を脱ぎ、


みんなの方へ走って向かおうとしていた。



トントン
えっ!?グルさんっ?
グルッペン
ほーらトントンも来ないと次こそ置いてくぞ〜!
トントン
えぇっ!?ちょ、待て!





慌てながら僕も靴を脱ぎ、グルッペンを追いかけた。







グルッペンに追いつこうと全力で走ると


徐々にみんなの背中が



手を伸ばすと届きそうなくらいまで来た。






実際まだ距離は遠い。



けど、みんなの近くまで戻ってこられたような気がして、

とても胸が熱くなった。




嬉しくなった僕はまた涙が込み上げてきた。



こんなに涙脆なみだもろいはずじゃなかったのに。


でも、きっと幸せなんだろうな。








そう思いながら僕は目を擦り、


みんなの元へと走って向かう。

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