僕は何度も涙をこっそり止めようと顔に手をやり、
顔を隠すようにした。
けど涙は止まらない。
僕は必死に涙を拭き取ろうとする。
こんなぐしゃぐしゃな顔、
みんなに見せられるわけないもん。
そうもがいている時、グルッペンは僕の名を呼んだ。
先程まで隣に立っていたグルッペンは
静かに涙を拭こうとする僕の隣に座ると、
改めて口を開き直した。
そうグルッペンは太陽の方を指して言った。
僕は言われるがままに指の方向に視線をやった。
そこには誰が見ても楽しそうと思えるくらいの笑顔のみんながいた。
雨の降った後で草原も濡れているというのにも関わらず、
全力ではしゃぐシッマと
手を引っ張られている
別にはしゃぐ気はないという顔をしているが、
そこはかとなく楽しそうなショッピ君。
巻き込まれてショッピ君に手を引かれている
苦笑いのエミさんと
楽しそうだからといって
それについて行くニコニコのゾム。
その後ろをルンルンでスキップをしている大先生と
嘲笑うかのようにして楽しそうなシャオロン。
保護者のように見守りながらついて行くオスマンと
呆れたような顔をしているが結局楽しそうにしているロボロ。
みんなの周りをクルクル行き来するチーノ。
そして、僕の隣で笑ってくれるグルッペン。
みんなからは沢山の幸せが溢れていた。
もしかしたら、こんなにも幸せそうなみんなの傍で
笑っていられる僕はずっと幸せだったのかもしれない。
勝手に自分は不幸な人間だと決めつけて、
周りに迷惑ばっかかけていただけだったのだろう。
僕がそう言うとグルッペンは立ち上がり背を向けて言った。
グルッペンはそう言うと、ぱぱっと靴を脱ぎ、
みんなの方へ走って向かおうとしていた。
慌てながら僕も靴を脱ぎ、グルッペンを追いかけた。
グルッペンに追いつこうと全力で走ると
徐々にみんなの背中が
手を伸ばすと届きそうなくらいまで来た。
実際まだ距離は遠い。
けど、みんなの近くまで戻ってこられたような気がして、
とても胸が熱くなった。
嬉しくなった僕はまた涙が込み上げてきた。
こんなに涙脆いはずじゃなかったのに。
でも、きっと幸せなんだろうな。
そう思いながら僕は目を擦り、
みんなの元へと走って向かう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。