第6話

傘 の 不 器 用 。
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2018/03/24 07:20


ヒナタ
はぁ〜、疲れたね〜。
うん。
無事に体育祭を終え、教室でのホームルームを終えた後、僕とヒナタ、そして彼女は下足室に居た。
どうやらタクミは委員会で残って、片付けをするらしい。
彼女
いつものおしゃべりマンが今日は静かだ。
靴、
僕が後ろに振り向き、彼女の顔を見る。
あったのか?
彼女
えーっと、うん、まだ、見てないんだけど…
「戻ってたらいいな、みたいな!」と、またヘラヘラ笑う。
それに、「え、何それ、大丈夫なの?」と心配するヒナタの声が下足室に響く。

いや、普通は笑えないと思うけど。

そう言うと、彼女は下足室で自分の靴棚を見る。
彼女
あ、
良かった、戻ってんじゃん。
僕がクスッと笑うと、彼女が「うん!」と再び笑い始める。
ヒナタ
それにしても、この雨、どうしようか。
ヒナタが外の様子を見ながら、僕に聞いてくる。
ヒナタ
雨宿りする?
いや、そのまま帰る。
と、彼女の手提げ袋から折りたたみ傘を取り出す。
彼女
良かったら、これ使う?
ヒナタ
え、でも、す…
『す』?

彼女がヒナタに「しーーっ。」と人差し指を自分の唇に当てる。
ヒナタ
ご、ごめんっ。でも、悪いよ、そんな。
彼女
いーの、いーの!
彼女はそう言うと、折りたたみ傘を僕に押し付け、走って下足室を出ていってしまった。
校門を出た所で、彼女が僕達に振り返って大きく手を振る。
ヒナタ
ど、うしようか?
せっかく貸してくれたんだし、一緒に帰ろうよ。
ヒナタ
そ、そですねっ。
さっきの『す』って、霜村さんの名前?
ヒナタ
ん…、まぁ、うん。
「あぁーー、ヒントあげちゃったぁぁぁ!」と、ヒナタが残念そうな声を上げる。

そうか、「す」から始まるのか。
ヒナタ
この事、内緒ね!
うん…てか、隠し事とか出来ないタイプだよね、ヒナタ。
ヒナタ
うん…。
そこからは2人で1つの傘に入り、帰っていくことにした。
途中までヒナタを送るつもりだったが、ここは家まで送ってあげた方がいいか、と考え直し、家まで送ることにした。
家まで行くのに何度も断りの言葉を貰ったけど。

家に着くなり、ヒナタが「ありがとう。」と感謝を伝えてきた。
うん。
ヒナタ
でも、やっぱり不器用なんだね、変わってない。
ん?
ヒナタ
だって、私が濡れないようにって傘さしてたけど、
ヒナタがクスクスっと笑う。
ヒナタ
人より相手を考えすぎてるから、自分が濡れてるよ?
そう言われて、気づく。
確かに結構濡れていた。
ヒナタ
なんか、ちょっと安心しちゃった。やっぱり変わってないね。
どこが?
ヒナタ
友達のことを1番に考える所。事故に遭う前とか、私達に何かあったらすぐに怒ってて…喧嘩早かったなぁ。
あぁ、そうか。
彼女が言ってた喧嘩早いって、このことか。
ヒナタ
結構、敵も多かったんだよー。
まじか。
ヒナタ
…あのね、事故に遭う前、私、告白…したの。
突然の言葉に戸惑う。
ヒナタの目はどう見ても、僕にした、という訴えの目だった。
ヒナタ
こたえ、貰う前に事故に遭っちゃったから、まだ貰えてなくて…
うん、
ヒナタ
いいかな、そのこたえ聞いても…?
僕は彼女から貸してもらった傘を右手に、ヒナタの目から視線を外した。
ごめん、まだよく…ヒナタの事も、その事も分かってないから、もう少し待って。

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