第4話

体 育 祭 の 不 器 用 。 ①
144
2018/04/05 13:03
時はかなり飛んで、あれから一週間後。
とうとう体育祭がやってきた。
今日は午前中は天気がいいようだが、午後から雨が降るかもしれないらしい。
ま、大丈夫だろうけど。

心配しなくても、応援旗はしっかり3日前に完成した。
現に、今、応援がてらに応援席の後ろで、クラスの奴らが振っている。

…序盤はヒナタのクラス対抗50メートルハードル競走。

僕が応援席の椅子に座り、ぼーっとグラウンドを眺めていると、タクミが隣に来た。
タクミ
ん、ハチマキ。
そう言って、渡されたのは緑のハチマキだった。
どうせなら、情熱の赤、とかが良かったな。
タクミ
それは思う。
そんなどうでもいい事を言うと、僕は即座にハチマキを半分に折り、中心をおでこに当てて、後ろでキュッと結ぶ。
タクミ
よし、結べた。
タクミもしっかり結んだようだ。だが、僕に視線をやるなり、「本当に不器用だな」と、今度は笑ってきた。
え、何が?
聞き返したタイミングで、彼女が走って、この間に割り込んできた。
彼女
タクミ、先生が体育委員、集まれってさ。
タクミ
あ、もしかして、なんか仕事?
タクミの問いに、「多分。」と答えると、タクミはすぐさま立ち上がって、先生の所に行ってくる、と走って行ってしまった。

と、今度は彼女が隣の席にやってくる。

先程のタクミの『不器用』という言葉が気になり、次は何が不器用なのか、知りたくなってしまった。
笑われるって事は、恥ずかしいって意味なんだろうし。

でも、おしゃべりマンには聞きたくないんだよなぁ。

けど、仕方が無い。
…タクミに、不器用って言われた。
彼女
でしょうね!ハチマキの結び、縦になってる。
彼女はこの数日間と同様に、また「きゃはきゃは」と笑って、「後ろ向きなよ。」と僕に言う。
彼女
結びなおしてあげようか?
あぁ…、はい。
彼女
不器用だねぇ、絶対プレゼントとかリボン結べないよ。
彼女は僕が結んだリボンをはらりと外すと、僕に丁寧に結び直してくれた。
今度はリボンは横になっている…らしい。
ありがとう。
彼女
ん、どういたしまして。
僕が再びグラウンドに視点を戻そうとして、初めて気づいた。
その痣、どうしたの?
彼女
え?
僕側の耳付近の頬の方に、あおく、内出血している痣が姿を現していた。
彼女
あぁ、これ?えぇっとね、…
うん。
彼女
転んだの。
『転んだ』? 転んだだけでこんな痣が出来るのか?

僕が不信に思い、彼女の顔を見つめると、
彼女
あはは、やだな〜、そこまで見られると照れちゃうじゃん。
と、その痣を手で隠すようにして笑う。
彼女
こんな痣…見られたく無くて、髪下ろしてたんだけどね。さっき先生に『体育祭だから髪結べ』って怒られちゃった!
だから、1週間前のあの時は髪を結ばなかったのか。

僕は1週間前くらいに、やけに結ぶのを嫌がった彼女に納得がいった。
でも、『転んだ』というのはどう考えても嘘くさい。

ま、別に関係ないけど。



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