人の波に飲まれながらも、あなたを探していたオーターは、騒ぎ声を聞いた。
曰く、「単体で飛行している箒が居る」と。
もしや……と思った。オーターが想像した奴なら、やりかねない。
本当にそれかどうかは置いておいて、神覚者として対応しなければならない。
それどころではないのだが、渋々声がする方へと行ってみることにしたのだ。
そして、今に至る。
モナクだと分かった瞬間に、砂で拘束して引き寄せる。
そうして言われたのがこの言葉だ。
だが、オーターの管理不足が原因でもあるので何も言えない。
部屋には鍵を掛けたはずだ。
オーターが掛け忘れる事は、徹夜後以外はない。
ふふーん、と胸を張ったように言う。
そんな事も出来るのか、とふいに間抜けな声が出る。
魔法局、特にオーターの自室には重要な書類が置いてある。
だから、部屋の壁は厚く、窓も簡単には割れないはずだ。
それなのに、目の前の箒は体当たりをして割った、と言っているのだ。
そんなことがどうして分かる、と聞こうとする。
しかし、此奴に聞いても、しっかりとした回答は望めないだろう。
モナクは、「割られた痕跡は結構最近のだな」と付け加える。
最近とは何時だろうか?
モナクにとっての最近と、オーターの最近ではズレている可能性があるのだ。
それに、その部屋を使ってから、そこまで日を重ねていない。
ただ、老朽化しているのは事実だろう。
割れてしまったのだし、交換しようと決意する。
出来ても体当たりくらいだ。
それならあなたでも出来そうである。
モナクは一瞬無言になる。
やはり大した情報も持ってないのだろう、とオーターは歩き始める。
此奴に時間を費やす程暇ではないのだ。
オーターは立ち止まる。
今、まさに必要としている情報だった。
モナクは、頷くような素振りを見せる。
何だそんなことか、とオーターは思う。
老朽化していることが分かったのだし、交換する機会が出来たので良いだろう。
これであなたの場所が分かるなら、それで良かった。
しかし、モナクはまだ続ける。
意外な方面からの条件だった。
ここでそれを持ち出す理由が分からない。
メシシスの資料を、オーターは読了している。
もとからあなたに言うつもりはなかったが、資料を読んでさらにその気が増した。
しかし、この箒がそれを言ってくる理由が分からないのだ。
いずれ分かる日が来るだろう。
そう振り切って、モナクに着いて行く。
とある新しい建物の前にモナクが止まると、そう言った。
万が一、すぐには助けに行けない時の為だろう。
此処なら、密室の可能性が高い。
箒に気持ち悪がられても、と思う。
それに、お前こそ位置情報を持っているじゃないか、とも。
建物内を覗く。すると、階段と、無数の部屋が見えた。
どうやら、普通に人が住んでいるようだ。
オーターとモナクは、階段を上り始める。
「004」と書かれた部屋の前で立ち止まる。
モナクがそう言った時、突然、部屋からは鈍い音が響いた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!