第7話

#7
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2023/03/04 08:28
シルクside.
明くる日の午後。

歩みを進める俺の足は、どこか弾んでいた。
シルク
...こっち、か。
いつも何気なく通り過ぎていた路地を曲がる。

スマホの現在地と地図上の目的地が近づいていく。
シルク
こっち、こんな風になってんだ...。
シルク
...あ。
目の前に現れた、白色のアパート。

...うん、写真とそっくり。
シルク
ここか!
シルク
2階の1番階段側の部屋だっけ...。
シルク
ん、そーだ。
階段を登り、すぐ右を向く。



...ピンポーン。
モトキ
...はい。
シルク
あ、シルクです!
モトキ
あぁ、シルクさん。
モトキ
待ってください、今開けますね。
シルク
はい。
インターホン越しの声が途絶えると、数秒後に鍵が開く音がした。
モトキ
...すいません、急に呼び出しちゃって。
シルク
いえいえ。
シルク
...あの、渡したいものって...?
モトキ
...あぁ。今持ってきますね。
モトキ
どうぞ上がってください。ニコッ
シルク
あ、ありがとうございます!
足を進めると、部屋の全貌が目に入る。

...やっぱ、綺麗な部屋だな...。

白基調の部屋で、どこかモトキさんらしい。

物が最低限しかなく、几帳面なのが伝わってくる。

「是非座ってください」という彼の声に、その場にあった椅子に腰を下ろす。
モトキ
...シルクさん。
シルク
...はい?
何故かドアの前から動かないモトキさんが俺の名前を呼ぶ。
モトキ
急にお願いしたのに、来ていただいてありがとうございます。
モトキ
...とても、嬉しいです。
そういうと、彼はとても嬉しそうに笑った。
...とても、嬉しそうに。



まるで、花が咲くように。
シルク
...!?
その瞬間、時が止まった。


比喩ではなく、本当に止まったようだった。


ただ、体が徐々に粟立つ感覚だけが、時の流れを自覚させた。
シルク
な、んで...?
モトキ
...シルクさん?スッ
シルク
っ!?パシッ
差し伸べられた手を、反射的に振り払う。
モトキ
え...?
シルク
お前、誰だ...?
困惑している様子の彼に目を向け、そう発する。

俺の視界に映る、すっかり見慣れた顔。


その顔が一瞬、「何か」によって遮られる。
シルク
誰だよ、お前。
モトキ?
...へぇ?ニヤッ
目の前で嗤う男の周りには、鮮やかな花が散っていた。

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