モトキside.
本当は楽しい時間だったんだと、今では思う。
何も分からない俺を、優しく抱きしめてくれたのは「彼」だった。
どんなことだって俺に教えてくれたのも、もちろん「彼」だった。
「彼」...「先生」は、俺の世界そのものだった。
俺の知る全てを形容する存在なんだ、と信じて疑わなかった。
...だから、先生は悪くないよ。
全部、全部俺のせいだから。
期待に応えられなくてごめんなさい。
皆みたいに、完璧になれなくてごめんなさい。
いつだって貴方は、この不完全な手を引いてくれたのに。
もうずっと、何もかも、欠けたまま。
でも、それもお似合いなんだろう?
...あぁ。でもきっと、『彼』なら。
あの快活で、子供のような笑みで、
「そんなことない」って、笑いかけてくれるのかもしれない。
...なんて、高望みかもな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。