モトキside.
...ピンポーン。
そうチャイムが鳴ったのは、ある日の昼下がりのことだった。
家に人は呼んでないはず。...まぁ、何か頼んだ覚えもないのだけれど。
まぁ、誰にしてもこのまま待たせるのは失礼だな。
家の外にもギリギリ聞こえるくらいの声量で返事をして、ドアに手をかける。
...ガチャッ。
地面から上へと動かした目に、真っ白な白衣が映る。
確かに見覚えのあるそれに、思考が止まった。
「今すぐドアを閉めろ」と、苦し紛れに本能が叫ぶ。
しかし、俺の顔はゆっくりと上を向き続けた。
そして、置き去りにした思考を辿るうちに、「誰か」と目が合った。
喉が、ヒュッと鳴るのが分かった。
身体が、動かない
なんで、なんでこいつがここに?
混乱で声が掠れる。
そういうと目の前の「誰か」は、その骨の浮き出た手をいきなりこちらに伸ばした。
苦し紛れに息を吸い込む。
そう言い放ち、荒々しく掴まれた左手を強く握られる。
痛みに、吸い込んだ息が漏れ出ていく。
息とともに、無意識にそんな言葉が零れた。
過去に、何回も口にしたことのある言葉。
俺に「先生」と呼ばれた目の前の男は、俺の目を見て薄く笑う。
瞬間、意識が遠ざかって行った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。