第5話

死んでいく
私をよく知るあの子でさえも理解してくれなかった話を、他の誰かに話す勇気がない。

あの日を境に独りになった。

否定も肯定もされない、自分の世界。眠る前にそっと自分を慰め励ますことで、少しだけ楽になれた。

大丈夫、大丈夫。いつかきっとこんな場所を抜け出せる。

私の枕はいつも湿って冷たかった。そして毛布にくるまり、胎児のように体を丸めるのだ。

私の身体は日常生活に支障をきたす程にまでこわばっていった。まず、ブレーキがかけられないから、自転車にも乗れない。足の指先に力が入らないから、電車に乗っていてもひとりじゃ立っていられない。水に触れる時、感覚がない。まるで何かに撫でられたようにしか感じられなかった。

「先生。」

「んー、どした?」

「私の身体なんか変かも。」

先生は本を置いてメガネをかける。本の表紙には『ハムスターの飼い方』と書いてあった。

「先生、ハムスター飼うの?」

「いやぁ、いい出会いがないからさ動物で気分紛らわそっかな~って。」

げへへと愛おしそうに目を細めながら、先生はイラストのジャンガリアンハムスターを撫でる。

「でも、独身でペット飼うとそっちに愛情が傾いて結婚しにくいらしいよ。男よりペット優先になりやすいんだって。」

「げっ、マジか。あたし、今日ペットショップ行こうと思ってたのに·····。」

「先生綺麗だから直ぐに結婚出来そうだけどね。」

「えーと、大学二年生から今日まで殿方に触れてすらいないんですが。」

「だとしても三年くらいでしょ。」

先生は、新卒で司書になった。私の方が一年長くこの学校にいる。

「んで、ひよは身体のどこが変なの?あたしより保健の森田先生の方がいいんじゃない?専門知識ないよ。」