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第1話

壊れたものは
心が死ぬってこういうことなんだと思う。


誰にも言えない痛みが身体中を徘徊して、あちこちを傷つけていく。

『言葉は花束にも、ナイフにもなる』

いつかそんなこと言われた。

私には今、ナイフしか刺さっていない。

抉られて、涙を流すように血を吐き出す。
滴った先にある血溜まりに気づいていないのか、気づいていても無視をしているのか。

私はこの家で空気だった。お金と、僅かばかりの領域、最低限度の配給。子供が拾ってきてしまった猫を捨てるわけにもいかず、仕方なしに世話をするように。

泣いているところなんて見せられない。弱い部分なんて敵の視界にも入って欲しくない。

これは強がりじゃなくて自分を保つための最終手段だった。

その頃だっただろうか。

私は思うように体が動かせなくなったのは。