第39話

状況把握
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2021/04/28 13:16
あなた

えっ、何。爆発でもしたの。

花島 涼
花島 涼
何が起こったんだ。
 何が起こっているのかが全くわからない私達は、ただ呆然とショッピングモールを見上げていた。
 けれど、ハッと我に帰る。
あなた

(何をぼーっとしているのよ、私。なんとかしなきゃ。えっとまって、なんとかって何よ。どうすればいいの)

花島 涼
花島 涼
さくらっ。
花島 涼
花島 涼
逃げよう。逃げなきゃ。
あなた

(そそそそそうよ、逃げなきゃいけないんだわ。私と違って、人間である涼は簡単に死んで、しま……う……)

あなた

……ごめん、逃げてて。私は行かなくちゃ。

花島 涼
花島 涼
行くってどこにだよ。逃げないと、死ぬぞ。
何が起こっているのかわからないんだ。こっちにも何か起こるかもしれない。
出来るだけ離れたところへ行って、情報を得るんだ。まずはそれからだろ。
あなた

そうよ、死ぬ。死んでしまうのよ。

あなた

花香と文花さんが。

花島 涼
花島 涼
あっ……。
あなた

それだけじゃないわ。ショッピングモールにはたくさんの人間がいたのよ。人間は脆い。私たちなんかより、あっという間に、簡単に死んでしまう……。

あなた

……行かなくちゃ。

花島 涼
花島 涼
そうっ、だけど……。
 涼は悔しそうな顔で俯いている。大丈夫だから、私は死なないから。怪我はしてもすぐに治るし、死ぬことはおそらくない。だから、大丈夫。
 どれだけ言い聞かせようと思っても、どれだけ自分に言い聞かせても。それでもやっぱりどこか自信がなくて、不安で。
花島 涼
花島 涼
俺も、行くよ。
あなた

……え。

あなた

だっ、だめよ。涼をあんな危険なところへ連れていくなんて。

花島 涼
花島 涼
俺も、嫌だよ。桜がそんなところへ行くなんて。
花島 涼
花島 涼
でも、仕方ないじゃないか。どう頑張っても、俺には桜を止められそうにない。それなら……。
花島 涼
花島 涼
俺も、行くよ。
一瞬、何を言われたのかわからなかった。けれど、徐々に理解していく。
あなた

……わかったわ。

あなた

(まずは今の状況を把握しなきゃ)

あなた

損壊しているのは一番上の階の一部だけね。
他は無事のようだわ。
音が大きかったから驚いたけれど、全壊しているわけではないわね。

私はぶつぶつと今得ている情報をつぶやく。口に出して理解しようとするのは、幼い頃からの癖なのだ。
あなた

さあ、行きましょうか。

花島 涼
花島 涼
ああ。
私達は死地へと足を踏み入れた。

 これの始まりはいったいなんなのか。そんなこともうわからない。けれど、思えば、私たちの始まりは、私があなたの、涼の目を見た、あの日から。

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