第17話

お父様の思い
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2020/03/12 05:58
涼さんが夢の世界に入ったころ。私は目となる術を設置し、お父様のもとへ向かった。
あなた

お父様ー。報告に来たよー。

たかし
たかし
おお、おかえり。
たかし
たかし
……よくそんなに楽しそうに帰ってこれるな。喧嘩をしたばかりなのに。
あなた

それとこれとは話は別よ。役目を果たさなくちゃ。妖怪の1人としての役目を、ね。

たかし
たかし
それもそうだな。
たかし
たかし
で、どうだった?何か掴めたか?
あなた

彼女の名前は松下花香。涼さんと同じクラスの女子高校生よ。

あなた

家系は陰陽師。おそらく、昔の陰陽師が成り立っていた方法を知っていたのでしょうね。微かにだけれど、彼女から同族の血の匂いがした。

あなた

封印する方法も知っているみたいね。人間に迷惑をかけている妖怪を封印していると言っていたわ。まあ、本人から聞いた情報だから確認がいるけれど。

たかし
たかし
また危険なことをしたのか?本人に直接聞くなんて……。まあいい。とりあえず、松下の家系で調べてみよう。確か、昔そんな陰陽師がいたはずだ。
あなた

その時代から続く陰陽師ってこと?……面倒なことになりそうね。

たかし
たかし
仕方がないだろう。こればっかりは。
たかし
たかし
で、彼女も殺さないのか?
あなた

彼のクラスメイトよ?死んだら彼が悲しむし、私たちが殺したって感づかれるわ。そうなったら、もう私、彼のそばにいられなくなるじゃない。

あなた

そ、れ、に。人殺しなんて、彼は嫌がるわ。彼が嫌がることはしないって決めてるの。

たかし
たかし
極力殺さない方向でいく、か。
あなた

どうしたの?今回はやけにあっさりね。

たかし
たかし
……前のことは、すまなかった。気が立っていたんだ。お前の好いている相手なら、気が緩んでしまいそうで。それに、お前のことも心配だった。
あなた

(……。)

あなた

私こそ、ごめんなさい。勝手な行動をとってしまって。

私は少しだけ頭を下げながら、お父様に謝った。
たかし
たかし
これで仲直り、だな。
お父さんはそう言って笑った。握手を交わしながら、私も笑った。なんだか穏やかな雰囲気が流れていた。
たかし
たかし
とりあえず、ゆっくりして行きなさい。
あなた

ええ。少しだけ、ね?

ゆっくりとその場に腰を下ろし、お父さんがお茶を入れてくれているのを見守る。

その時だった。涼さんの隣に置いてきた術が、反応した。
「テキイアリ、サツイアリ!」
まらで、そう呼びかけてくるかのように、術の向こう側からは殺気が感じられた。
あなた

お父様!私帰るわ!

たかし
たかし
え、どうしたんだ?急に……。
お父さんの言葉を最後まで聞かないまま、私は家の外に飛び出した。

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