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2021/08/03

第42話

知っているはずでしょう?
 何か壁のようなものを通り抜けたような感覚がする。実際には、壁を通り抜けたことなんてないのだから、そんな感覚なんて知らないのだけれど。
 そんなわけのわからないことを考えるくらいには、私は焦っていた。どうすればいいのかも分からなかったし、戻ることすらできなくなっているのも、ちゃんと理解できていた。
 だって、結界の先にいたのは。
あなた

お、父さ、ま……。

たかし
たかし
……。
松下 文花
松下 文花
花香っ。きちゃダメって言ったでしょう。
松下 花香
松下 花香
でもおかあさんっ。
松下 文花
松下 文花
でもじゃない。今すぐ出ていきなさい。
松下 花香
松下 花香
無理よ、もう結界の中なのよ。
松下 文花
松下 文花
っ……。
 2人の会話なんて耳に入らないくらい、衝撃だった。身に覚えのない妖力。それがお父様のものだって言うの。そうだとしても、何故。私たちは、人々に知られず、適度に噂になってこそ妖怪なのに。どうして。
 知られずのまま知られることを己の永遠の目標とする。それが私たち妖怪なんじゃなかったの。
あなた

どう、して……。

たかし
たかし
……。
あなた

お父様……。

たかし
たかし
しかた、ないじゃないか。
たかし
たかし
そうでもしないと……消えてしまう。仲間達が、消えてしまうだろう……。
あなた

……。

気がついていない、訳ではなかった。

 妖怪は、誰にも噂されなくなったら、消えてしまう。それは覆しようのない事実だ。
 最近は科学とやらが進んで、妖怪や神様が信じられることは少なくなってきた。私たちも最近は、人間を殺してしまう以外の方法で噂になろうとしてきたし、努力してきた。私からの提案だった。
 だから、なのだろう。ここ最近は確かに、力の弱る妖怪も多いように感じられた。後悔をしていない訳ではないけれど、間違った判断をしているとも思えない。大切に、感じてしまったから……。
たかし
たかし
お前の望みならと、今までは様子を見てきた。
だが、どうだ。失ってしまったら、もう元には戻らないんだぞ。
たかし
たかし
人間だって、植物は野菜として、動物は肉として食べるじゃないか。
それと何が違うんだ。
たかし
たかし
お前が何を言おうが、俺は仲間のためにやる。なんだってやってやる。
たかし
たかし
仲間が、大切だから。
たかし
たかし
お前が、大切だから……。
花島 涼
花島 涼
さくらっ。
あなた

涼。
どうして……。

花島 涼
花島 涼
避難は終わった。あの子達が勇気を出してくれたおかげでな。
それよりも、さくらが心配で……。
……この人は。
あなた

……。

あなた

(まったく、一体どうすればいいと言うのよ……)