カーテンを開けて外をのぞいていると、朝の光で涼が目を覚ましたようだ。それとほぼ同時に、ジリリリリと目覚ましが鳴り始める。
少し寝ぼけているようだ。
私はにっこり笑うと、あくびをしながら歩いていく涼について行った。
少し悲しい気持ちでそう言うと、家族に聞こえないよう小さな声で涼はいった。
正直、少し嬉しかった。好きな人に褒めてもらえたのだから、当然のことなのだろうけれど。
ばしゃばじゃと涼が顔を洗う。私はそれをただ、横で見つめていた。
涼が部屋に戻っていくのを見届けた後、私はリビングに向かった。ほんとうはほんの少しでも離れては行けないのだろうが、近くに妖怪がいないのは気配でわかるし、問題はないだろう。
リビングに向かうと、そこには涼の両親がした。
聞こえないとはわかっていても、にっこりと笑いながら挨拶をする。
そこには、仲の良い夫婦がいた。私の母が生きていた頃は、私の家もこんな感じだったのだろうか。
私の母は、遠い昔、生き残っていた陰陽師に殺されてしまったらしい。まあ、ほとんど覚えていない人だ。大して悲しくはなかった。
着替えを済ませてきた涼がリビングに入ってきた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。