第6話

刺客
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2020/01/16 12:06
刺客の気配がする路地に入る。すると、刺客の方からさっと現れて、話しかけてくれた。
刺客
刺客
どういうことですか?姫様。
あなた

こっちが聞きたいくらいだわ。早いのね、お父様の命令?

この刺客の顔は、見覚えがある。お父様が雇っている刺客だ。
刺客
刺客
我々は王以外の命令では動きませんので。
あなた

…そう。

あなた

それより。延期よ。帰りなさい。今の、見てたんでしょ?

刺客
刺客
確かにこの目で見ましたが…王の命令を、姫様が曲げることはできません。
あなた

誰も殺さなくて済むかもしれないのに?

刺客
刺客
私たちはすでに闇の住人。人間など何度も殺していますから。
あなた

(…お父様、意外と怖いのね。他にも何人も殺していたなんて…。)

あなた

(でも、彼だけは譲れないわ。)

あなた

彼を殺したら、私も死ぬから。

刺客
刺客
…は?な、なぜですか?!あんなガキのために…姫様が!?
あなた

(そりゃあ私たち妖怪からすればガキだろうけど…何もガキ呼ばわりすることないじゃん。)

あなた

好きだからよ。私、彼に恋したの。

あなた

このことについては、お父様も容認済よ。

お父様に相談した時は、かなり反対されたのだが、見るだけだから、彼が死んだら諦めるからと私が押し切ったのだ。
刺客
刺客
わ、分かりました。一旦引きます。
あなた

下がりなさい。

刺客
刺客
は、はい。では。
刺客の妖怪はどこからか現れた煙に紛れて消えた。
あなた

(他に刺客はいないようだし…帰るか。)

学校の方をふと振り返ると、涼が窓から顔を出してキョロキョロと何かを探していた。
あなた

(…今は休み時間だったっけ?何してるのかな?)

ふわっと浮き上がり、涼の方めがけて飛んでいく。後百メートルというところで涼はこちらに気がついたようで手を振ってくれた。
あなた

変に思われますわよ?誰もいないところに手を振ったら。

私が話しかけると、涼は携帯を取り出して、耳に当ててから返事をしてくれた。
花島 涼
花島 涼
そこまで気が回らなかったよ。
あなた

それで、何をなさっているのですか?

花島 涼
花島 涼
君を探してたんだ。
あなた

…私を?

あなた

(な、なんか恥ずかしい…。なんでだろう。)

花島 涼
花島 涼
そう。
あなた

何か契約について聞きたいことでも?

花島 涼
花島 涼
ううん。刺客があるって言ってたから…大丈夫かなって。
あなた

(や、優しい…。)

あなた

大丈夫ですよ。下がらせましたので。

あなた

それより、狙われているというのに窓から顔を出さないでくださいね?危ないですので。

花島 涼
花島 涼
た、確かに…ご、ごめん。
あなた

謝らなくてもよろしいのですよ?

にっこり微笑みながら話す。すると、涼の友人が涼の肩をポンと叩いた。
涼の友人
涼の友人
そろそろチャイムなるぞ?また電話してんのか?
花島 涼
花島 涼
ああ。ありがとう。
花島 涼
花島 涼
じゃ、またね。
あなた

はい。ではまた。

手を振りながらゆっくり後ろに下がっていく。そして私は、妖怪世界へ行く煙の中に消えた。
あなた

(あー!嬉しかった。)

あなた

(私を心配してくれていただなんて…!)

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