明るく振る舞っても、焦りと恐怖は拭えない。急がなければ、たくさんの人が死んでしまう。すでにもう何人も亡くなっているかもしれない。そんな不安が、私の、私たちの中にはあった。
涼も命をかけているんだ。私も、覚悟を決めよう。妖怪だったことがバレてもいい。そんなことより、2人の、この中にいる人たちの命の方がよっぽど大事だ。もしそれで、涼のそばにいられなくなったとしても……。
建物の中とこちら側をつなぐ。異次元を使うものだから、人間のなせる技でないことはバレバレだ。けれど、それでもいい。大切なものが、この中で待っているのだから。
目の前に現れた大きな光の渦に飛び込み、涼に向かって手招きをする。いまさら無理だなんて無しなんだからね。
光の先にあったのは、怯えた顔でこちらを警戒する人々だった。どうやら無事だった大きな広場につながったようで、たくさんの人々がこちらを見ている。
中には怪我をした人や子供もいて、事態の深刻さを物語っている。
大丈夫なのかという声も飛び交う中、男の子は友達らしき子供達を何人か連れて光の中へ飛び込んでいった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。